しあわせな結婚

8話のレオとのシーンが良かった。元検事らしい理路整然とした隙の無い話し方や落ち着いた表情の中に、時折身内に語りかけるような温かみや情が滲むところが印象的で、ネルラへの愛情だけではなく、レオに対しても幸太郎なりの義弟愛があるんだなあって感じられました。ネルラを抱きしめた時の「俺より大きい」って笑い合うシーンもほのぼのと微笑ましくて良かったです。

マスコミにバレないようコソコソとゴミ出しをする姿や、日光で顔バレした時の変顔など、重くシリアスな空気を壊すことなく、絶妙な塩梅でコミカルさを滲ませる演技がさすが。ネルラが新婚旅行に行きたいと言い出した時や「危機的状況なの」と言われた時の反応や目が点になってる表情も、予測不能なネルラに翻弄されてる感じや、それが全く嫌じゃないんだろうなあってネルラへの愛情が伝わってきて良かったです。

ヤキモチを妬くネルラの姿を見てニヤけてしまったり、後ろ姿をいつまでも見送ってたり、可愛いなあって顔に出てしまってるところが良いですね。嫉妬されて嬉しそうにタオルを捨てるシーンも笑ってしまいました。奥さん大好きで浮かれてるだけではなく、道端でネルラが歌い出した時に周りを気にしつつ止めずにそのまま歌わせてあげたり、家事を無理強いしなかったり、事件が解決するまで引っ越さない方が良いという結論に至ったり、ネルラの変わり者な一面に理解があって常に彼女のためを思って行動する姿も素敵です。

ネルラが自分ではなく黒川を頼ったことに嫉妬したり、松崎しげるさんの歌に感情移入し過ぎて本番中なのに泣いちゃったり、ネルラと出会う前の幸太郎なら絶対にしなかったであろう行動や言動から、幸太郎にとってネルラの存在がいかに大きなものか伝わってくるところが良かった。道で自分を待つネルラに見惚れる表情も、疑念があってもモヤモヤを抱えていても、やっぱりどうしても彼女のことが好きなんだなあって想いの深さと強さが感じられて良かったです。

ネルラのことが大好きで放っておけなくて、でもどうしたら良いのか答えが見つからなくて葛藤する姿が、1話で依頼人に離婚を勧めまくってた人とは別人のようで、ネルラが幸太郎に与えた影響の大きさが感じられました。黒川相手にヤメ検らしい強気な姿勢を見せたり、寛の代理人としての頼もしい姿だったり、ドタバタとコミカルなだけではなく、優秀な法律家としての顔が見られたのも良かったと思います。

事件当日のことを思い出したネルラに矢継ぎ早に質問を重ねてしまう姿が、ネルラの無実を証明したい、警察からの疑いも自身が抱く疑念も早く払拭したいという幸太郎の焦りを感じさせました。圧を感じる畳みかけるような口調もネルラを心配してるからこそだって分かるけど、確かに警察の尋問を彷彿とさせるところもあって、ネルラが口を閉ざしてしまうのも分かる気がする。すれ違う姿が寂しく哀しかったです。

ネルラの寝相を微笑ましく見ていたのに、殺人犯かもしれないと知った後からは寝相を見る目が覚めている。心の描写がうまくて口から出るマシンガントークよりも表情で全てがわかる。冗談を言いつつ目が笑わないタイプ、仕事は笑い飛ばせても私生活はそうはいかないみたいで深刻さが窺える。

新妻が殺人犯かもしれなくて再捜査が始まってるっていうなかなかヘビーな状況だけど、ほどよくコミカルな芝居でシリアスになり過ぎないところが良いですね。特にネルラに髪を切ってもらうシーンで見せた、せっかくのネルラの気遣いを無下に出来ない優しさと、「もしかしたら…」という疑念や怯えが入り混じった表情が最高。ハラハラさせつつもクスっと笑えるっていうその絶妙なバランスがさすがだなと感じました。

ネルラとその家族に対する受けの芝居が秀逸。愛しさや幸せ、驚愕、気まずさ、照れ臭さ、戸惑い、疑念、色んな感情が言葉以上に伝わってくる表情が特に素晴らしくて、幸太郎の反応によってネルラの魅力とちょいちょい見せる違和感がより印象深く視聴者に映るところも良いなと感じました。