ザ・トラベルナース （2024）

歩の高速申し送り中の「そこ分かるから次いって良いよ」がめちゃくちゃ格好良かったです。きっぱり迷いのない口調が「絶対に大丈夫だ」って確信が持てる頼もしさを感じさせたのも良かった。森口への「いい加減にしなよ、逮捕されるよ」っていうアドリブのようなツッコミも切れ味抜群で笑ってしまいました。真面目だけどチャーミングさやコミカルさもあって、毎回良い味出してたと思います。

硬めの声音や語尾を伸ばさないつっけんどんな話し方が金谷のキャラクターに合っていて良いですね。「今日はたま子さんが作り日だから来ない」って本人がいるのに平然と言い切っちゃうのもはっきりした性格の金谷らしくて笑ってしまいました。八木の件も「逆恨みして嫌がらせしにきた」と超ネガティブに捉えるところが金谷っぽかったし、ポジティブに捉える森口と良い対比になっていたと思います。

皆が喋ってる後ろでパクとスリッパ卓球やってるシーンが面白かったです。森口がやってる時からチラチラ気にしていてやりたいオーラが滲み出ていたのも、めちゃくちゃ本格的なフォームで上手そうな空気醸し出してるのに、全然サーブが入らない下手っぴさもチャーミングで、普段のクールな姿とギャップがあって良かったと思います。

金谷は合理的な潔さと、感情的な激しさをの両面を持ったキャラクターです。この人が看護師で良いのかと思いながらも、実はこういう人の方が看護師に向いているのかもしれないとも思います。

演じる安達さんは経験豊富なだけに、嫌味になり過ぎず、強くなり過ぎず、冷たくなり過ぎない、加減が難しいこの役の魅力を存分に見せつけてくれています。下手な人がやると極端になり過ぎるところを、うまくコミカルささえ感じる軽さを混ぜ込むことで、絶妙にバランスを取っている。さすがだなと思います。

お尻でもなんでも触らせて早く仕事しなさいよ！と迷うことなく言えるって今までどんなふうに仕事をしてきたのだろうと考えさせられる。仕事だから我慢はつきものと思っている節もありナースの大変さを思いしらせてくれる。確かにきつい先輩だけど乗り越えてきて過去や強い信念を感じられてすごく好きです。

患者にセクハラされてもスルーして業務を続ける姿が、効率重視な金谷らしさを感じさせました。「仕事ですよ」って何の感情もなく割り切ってるように見えて、「看護が我慢になったら勿体ない」という静の言葉が刺さってるようだったり、ビンタ事件の後に自分が間違っていたと中村に謝ったり、平気なふりしてただけでずっとモヤモヤを抱えて仕事してたんだなって伝わってきたのも人間味があって良かったです。

「頭下げて患者が落ち着くならいくらでも下げれば良い」ってきっぱり言い切る潔さが気持ち良い。必死で感情を抑えて我慢してるっていうのではなく、「頭下げるのが最適解」とドライに捉えてそうなところも逞しくて格好良い。そうやって割り切ってるところも、自分のプライドよりトラブル回避最優先なところも、効率重視な吉子らしくて良かったと思います。

食欲のない森口への「救急車呼んだ方が良いかも」や、中村へのフォロワー少ない弄りなど、嫌味なのか本気なのか、それとも何の感情もなく口にしてるのか、何とも判断しにくいテンションの口調や表情が絶妙で面白いです。この淡々としつつも何処かコミカルさの漂う独特な空気感が良いですね。

「苦しまずに逝きたいんですよね？」って二宮を脅すシーンが格好良かったです。本当にやりそうなくらいの凄みと迫力があって、後で「あの看護師さん怖い」と二宮が怯える説得力があったのも良かったし、他の患者さんたちを動揺させた二宮への苛立ちと怒りも伝わってきて、厳しいし一見機械的なんだけど、金谷の患者思いで熱い一面が垣間見れたのも良かったと思います。

中村たちにテキパキと指示を出したり仕事を確認をする姿や、お喋りしつつもしっかり手元は作業をしているマルチタスクっぷりが、金谷の有能さや効率主義な性格を感じさせました。「歩ちゃん」っていちいち強調して揶揄うように呼びかけるのも金谷らしい。「優秀ですみません」という歩の言葉に「出た～」と森口と声を揃えてツッコんでるのも息ぴったりで面白かったです。