海のはじまり

海ちゃんと話す津野くんは穏やかで優しい。海ちゃんが感情を言葉にすることをちゃんと待って整理してあげてるようで信頼できる。その時間があるから夏への辛辣な言葉も活きてくる。みずきの母と違って根はいい人なんだろうなとちゃんと思うことができる。

水季が背中にもたれた時、家で2人きりの時、少し手を伸ばせば触れることができて違う世界が始まるのにそこを踏み出さない津野くんにムズムズしました。それを誠実さというのか弱さというのか。微妙なラインをなぞる演技が上手ですね。

水季が亡くなったことを知らせる電話が鳴った時からもうすでにそのことを分かっていて泣き出すのがすごい。自分を落ち着かせるように胸をさすりながら出たくない電話に出る。セリフはほとんどないのに水季が亡くなったことが分かる。来るべき時が来てしまったって感じ。圧巻だった。

海ちゃんに向けられた笑顔は今までで一番晴れやかで素敵だった。図書館での追いかけっこも髪の毛のくくり方も手慣れていて、水季が生きていた頃の日常を垣間見た気持ちになれた。役としてはちょっと女々しいというか恨みがましいけどそんな人が1人くらいいてもいいかなと思う。

まるで波が引くように水季と海が遠い存在になってしまった。部外者である自分が追いかけることもできずぼーっと眺めているしかできない無力さが夜の図書館のつぶやきに出ていました。1人取り残されてどうすることもできない悲しみが伝わりました。