獣になれない私たち

若い頃から見ている女優さんだけど、いい意味で容姿、キャラがほとんど変化がない。だから悪い意味で使える範囲が狭まる女優さんなのかなとも思う。正直言ってちょっと違った悪い田中美佐子も見てみたい気がする。長い間「変化がない」タイプの人は変化し始めると違う味が出るから女優として息が長い活動が出来るのかもしれないな～。

一見明るくてちょっと抜けている、普通の母親のように見えて、実は愛情深く寝たきりの夫を一途に愛し、介護するステキな女性を上手く演じていました。決して息子には依存せず、とても強く優しい女性の姿が良く似合っていました。

『獣になれない私たち』では、主人公だけでなく、脇を固めるキャストそれぞれの人生もとてもフィーチャーされていました。田中美佐子さんが抱えている役柄、夫の自宅介護を自らでしつつも、その事を理解してくれない身内にとても苦しい思いをしている。という難しい役柄でした。苦悩がありながらも、夫と築いてきた愛情に支えられて懸命に生きている姿が田中さんの演技を通してとても感動させられました。

役をすべて出し切っていて、とてもうまい演技でした。
ご主人の介護に対する自分の気持ちや、ご主人への思いをうまく表現していたと思います。
セリフがある場面では、言葉に思いを込めて演技していたし、
セリフのない場面では、目と肩で自分の思いを表現していました。

男の子のお母さん、という役柄がとても似合うと思います。今回は男の子というよりすでに男の人、ですが。息子のことに首を突っ込みすぎるところ、だけどそんなに嫌らしい感じがしないという絶妙な役を自然に演じられていると思いました。