監獄のお姫さま

板橋へのハニートラップなど、コミカルな場面も体当たり演技で臨むなど熱演が光っていましたが、1番印象に残ったのは最終回のしのぶと勇介の再会シーンです。「徐々にね」としのぶに声をかけるだけの短い場面でしたが、目を真っ赤にして少し微笑んだような千夏の表情が本当に温かく、気が強くて高飛車な彼女の本当の姿が垣間見れた感じがしました。

私生活で子どもがいるとは思えないくらい、痛々しい金持ち独身女性の役がハマっていると思います。吾郎へのハニートラップ作戦やにゃんこスターのマネなど本当に面白く女優魂を感じました。母親になってからより役の幅が広がったと思います。

最初の頃よりも態度が丸くなったというか、馬場カヨたちと距離が近くなって親しみを感じられる雰囲気が出てきたのが良いですね。ハッキリ、キッパリ言いたいことを言うところが見ていて気持ち良いですし、こんな我が強くて性格がキツい千夏ですらロスになるくらい、優介は皆にとってかけがえのない存在だったんだなということが伝わってきて、復讐に走る説得力がより強まると思います。

刑務官である若井を除くと、ツッコミの出来るキツめのキャラがいないので千夏の存在は貴重だと思います。口調はキツイけど菅野さんのサバサバとしたキャラと重なって聞いていて嫌な感じがしないのが良いですね。領収書チェックをしている時の徹底した厳しさも上手いし、「ハゲ散らかしとけば良いのよ！」とバサっと言い捨てるのも気持ちよかったです。

4話で父親と面会するシーンが素晴らしかったです。父親への憎しみだけでなく、愛情とか懐かしさとか寂しさとか、様々な感情が入り混じった表情がとても良かったです。広い調理室をテキパキと指示をだして仕切っている姿も頼もしく、金バッチの説得力がありました。

菅野美穂はいろんな役をやっていますが、控えめな役が似合っていると思っていたのに今回の少し下品でがめつい役もこんなにハマるんだと驚きました。笑い方に品がなかったり、言い回しが憎たらしかったり。意地悪をした時の目つきやニヤリと笑った顔が絶妙です。

もともと上手い女優さんだと思っていますが、今回のちょっと破天荒ながらも上手く取り入って優遇してもらってるそのオンオフの演技が見ていて飽きないキャラだと思います。自己中心的にも見えますが、その振る舞いに逆にスカッとします。

ちょっとプライドが高く、イヤミな女性の役ですが、彼女が演じるとなぜか憎めない感じがします。ショートカットも似合っていて、スタイルも良く、結婚していて一児の母とは思えない若々しさと爽やかさがある女優さんです。

カリスマ性はあるけど意地悪で高飛車で、女子集団に必ず１人はいる敵に回すと面倒くさいタイプを上手く演じていると思います。2話での馬場カヨとの初対面後、フッといじめスイッチが入る表情が怖くて上手いし、女囚たちの中にいてもスター然としているというか、堂々として華があって一般人とは違うという雰囲気が感じられるのが良いです。

本当に本を出版したりコラム書いたりしてる意地悪生意気女にしか見えなくて凄い。今まで数々の役をやってきていると思うし、バライティーなどで本人の人格像も分かっているのに何の違和感もなく役の自分にしか見えない凄い演技力。そしてそれを凄い演技力だなと思わせない自然さがまた凄いところ。

私は菅野美穂さんは大好きなのですが、このドラマでの演技はちょっと作ってる感じがしました。菅野さんの高めの鼻にかかったような声や普段の性格とのギャップが原因になっているのかもしれませんが、いい女風にクールに演じてるつもりなんだろうな、というのがすごく透けてみえる気がしてしまいました。