記憶捜査～新宿東署事件ファイル～

下半身が不自由で車いすという主人公の設定が異色で憎いです。動かなくても、座っているだけで眼光鋭く、生意気な神という刑事官の毒舌も軽くいなしてしまう心の余裕が増々心にくかったです。そして例えば第三話のように、家計を助けようと生活費を稼ごうと内職をして詐欺に騙された妻を咎めようとする夫に対して、日頃の夫婦の会話が大事だと諭して壊れそうになった夫婦の仲を取り持った時の含蓄のある言葉と口ぶりは流石、年の功で、他の若い役者には表現できない演技の重みがありました。

物腰の柔らかな紳士的な雰囲気ですが、言葉巧みに遠山や神を捜査に向かわせるしたたかな一面もあって、でもそれが嫌らしくなくてスマートなところが素敵です。2人を捜査に向かわせた後のしてやったりというニヤっとした笑みも、長年の豊富な刑事経験の自信を感じさせます。

年下の神を「刑事官殿」と呼んで丁寧な敬語で話していますが、それが自然で全然嫌味に聞こえないのが良いですね。年齢関係なくエリートの神に対してきちんと敬意を表していて、鬼塚の器の大きさが感じられます。犯人を追いつめる時のキリッと引き締まった表情も格好良いですが、神にちゃっかり仕事を手伝ってもらってる時の悪戯っ子っぽいチャーミングな笑顔も魅力的だと思います。

見ていて安心感が有ります。話し方やセリフの間とか声の質も心地よいです。年配なので動きが鈍くなっているような気がしましたが、二回目以降は車椅子だったので丁度良かったかも知れません。年下の上司や部下に威張るわけでも、しつこくもなく、さっぱりしているのが良いですね。

誰に対しても丁寧な口調で声に深みがあって温かさが感じられ、皆に慕われるのも納得の懐の大きさがあるところが素敵です。ベテラン刑事としての存在感はバッチリだけど威圧感がなくて親しみが感じられ、遠山や神に「刑事としてまだまだ」という台詞も全然説教くさく聞こえないところも良かったです。