燕は戻ってこない

いつもいいことを思いつきました！みたいな晴れやかな顔で理紀にとんでもないことを提案してくるところがサイコパスで怖かった。自分に子供ができるというお花畑状態なんだろうな。人の良さそうな顔というのが悠子と似ていて、似たもの夫婦だなと思った。

悠子と別れることになってもそんなに悲しそうじゃないのは自己愛が強いからってことでいいのかな。そんな別れからすぐに涼しげな顔で理紀に一年だけ子供の面倒を見てほしいと提案する。それがどんな残酷なことかなど分かっちゃいない。それが男の思考回路なのだろうかと興味深い。基を見ていると全く別の次元で生きている感じがして面白い。

元々吾郎さんの持っていたナルシストというイメージがピッタリくる役で伝説のバレーダンサーもしっくりきます。なにより立ち姿が完璧だしスタイルもそれなりに維持されていますよね。こだわりも自己愛が強い基ならあり得そうで説得力があります。

自分の精子を観察して喜んでいる男って気持ち悪いけど自分の遺伝子に自信を持っている基らしいなと思いました。理紀を最大限気遣うといいながらも病院のロビーで一瞥しかしないのも基らしい。やることなすこと女性目線では考えられない行動に出る。男ってやつは‥とため息が出ちゃう。

基はこれから命を宿すことになる理紀と、その子供を育てることを考えている悠子とは別次元にいるような感じがする。もうすでに自分の子供がそこにいるかのような幸福感が出ている。それは男性特有の感情をうまく表していると思う。先走る基に不安が残る。

奥さんに優しくかっこいい旦那なんだけど見ていくうちに自分のエゴが強いんだなと気づく。悠子と一緒にいたいっていうのも本音だろうけど、自分の種にこだわる辺りは強い自己愛を感じる。ナルシストに傾きすぎずいい人の範疇にいるところが気持ち悪さを生んでいる。