べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜

「やっと俺の立派さが分かったか」と得意げになる姿が、息子に尊敬されたいお父さんって感じで微笑ましかったです。蔦重が自分を頼って相談にきたのが嬉しかったんだろうなあって伝わってくる。血のつながりはなくても本物の親子なんだって感じられて、短いシーンだったけど印象深かったです。

鶴屋さんとの和解シーン、グダグダ言わずにこれまでの無礼を丁寧に詫びる姿が潔くて格好良かったです。筋を通してきた相手に、自分もしっかり筋を通すのが粋でスカッとしたし、蔦重のために鶴屋さんに頭を下げる姿も駿河屋さんの親心が感じられて胸が熱くなりました。

鶴屋さんが蔦重に暖簾を差し出した時、険しかった顔は解けてちゃんと居住まいを正してきちんと頭を下げるところがよかったよねー。蔦重の父親としてこれから仲良くしてやってほしい気持ちが素直に出ていた。なんだかんだいって蔦重に愛があるんだってところが好きです。

心配する時も褒める時も言葉少なにそれじゃ伝わってるか分からないよっていう態度でいるところがオヤジ様の不器用さ無骨さが出ていていいと思う。理屈ばかりの鶴屋を階段から突き飛ばして啖呵を切るところはかっこよかったねぇ。

麟形屋たちに憤り熱くなる蔦重を「吉原のためだ」と鎮めるシーン、眉間に皺を寄せて渋い顔をしているのが印象的で、事態を納めなければっていう気持ちだけでなく、蔦重を利用されたことへの怒りが滲んでいるように見えたのが良かったです。言葉は厳しいんだけど、表情や台詞の間でちゃんと蔦重への信頼や駿河屋さんなりの愛情が伝わってくるところがとても良いですね。

廓の中で育って廓の中で生きるのが当たり前だと思っていたのに蔦重はその枠を遥かに越えていく。そのことに戸惑い怒り狼狽える。多少ある親心が顔を覗く時にやりとしてしまう。そっから先は守れないという心配が見えるのがいい。

蔦重のやること全てに反対して過剰に厳しく接する姿に、最初は「何でそこまで？」と疑問だったけど、可愛さ余ってというやつだったんですね。ただの頑固な荒くれというだけではない、何だかんだ蔦重を大切に思っているのに素直になれない人間味溢れる一面が垣間見れて親近感が沸きました。一目千本を読んでいる時の、眉間に皺を寄せたいつもの険しい顔とは違う楽しそうな笑顔もとても良かったです。