ちょっとだけエスパー

市松の自宅に駆けつけ、心の声を聞いて適切な処置をする姿がすごく頼もしかったです。その後も毎日通って看病したり、食事を作ってあげたり、市松が自分は死ぬんだと不安を吐露した時も「うどん食って生きてるよ」と背中を撫でて寄り添ったり、桜介の代わりにっていうのもあるだろうけど、それ以上に弱ってる人を放っておけない文太自身の優しく面倒見の良い性格が感じられたのが良かったです。

どんどん四季と夫婦として馴染んでいくところが好きだけど、この愛がほんとの意味で通い合うことはないのかと思うと切なくなる。ほんとのことを言えずただ抱きしめるしかできないシーンは文太も同じくらい苦しんでいるように見えた。

記憶が混乱して泣き出す四季を抱きしめる時の表情が切ない。不安ごと全部包み込むような強めの腕の力が、四季を愛しく大切に想う気持ちそのまま表れているように感じられたのも良かった。シリアスなシーンだけでなく、市松との連絡交換を円寂たちに咎められた時の表情や、学食で誤魔化すようにポテトを食べまくる姿など、コミカルなシーンも表情が絶妙で面白かったです。

四季を騙してることへの後ろめたさとか、過去を語る円寂さんとのシーンとか、終盤の市松たちとの攻防とか、ほんのり恋心とシリアスさ、コミカルさのバランスが絶妙。色んな顔を見せるけどキャラは全くブレなくて、何をしてもどんな表情をしても「文太ならやりそう」って説得力があるのもさすが。冒頭のキスのくだりも大人同士にしてはだいぶ初々しくて微笑ましかったです。

四季への誕生日プレゼントを買いにエレベーターに乗って行ってすぐエレベーターで降りてくる。決められない自分への不甲斐なさがあって少ししょんぼりした顔がおじさんだけどかわいかった。変に知ってるふりをしないで今の四季のことを知ろうとするところが誠実に見えていい。

市松への大人げない態度、コミカルさとチャーミングさがあって、嫉妬っていうドロっとした感じじゃなくて「ヤキモチ」って言葉がぴったりな絶妙な塩梅が良かったな。四季とデートしながら互いに好き・嫌いを言い合う姿も、本当の夫婦みたいな空気感と仲の良さが微笑ましくもあり、ノン・アマーレが過ってチクっと胸に刺さるような切なさもあって印象深かったです。

四季との距離感が絶妙だなと思います。普通なら夫役を気負ってしまいそうですが、あくまで自然体でつかず離れずのいい距離感。冷たすぎず温かすぎず、見守っていたり観察していたりだんだん四季との生活が面白くなってきた様子にほっこりします。

四季と一緒にいる時の変な緊張がなくなってきたり、敬語の中にため口が混じることが増えてきたり、会話も楽しそうでリラックスした空気が流れていて、少しずつ彼女への気持ちが変わりつつあるのかなあっていう兆しが見えてきて、それがサラッと自然なところが良いですね。夫婦らしい二人にほっこりしつつ、今後「愛してはいけない」という掟が大きな枷になってくるんだろうなあって、幸せそうな四季の笑顔も相まってすごく切ない気持ちになりました。

円寂のレンチン能力を知った時の二度見とか、トイレを我慢してる時の顔とか、コメディ全開なドタバタシーンが寒くも薄っぺらくも見えずにちゃんと面白いのが凄い。千田の「最後の晩餐」という心の声を聞いてしまった時の複雑そうな表情も、声を聞いてしまった以上この人を犯罪者にしたくないという情や責任感、ミッションの概要が明らかになったことで俄然芽生えたやる気と覚悟を感じさせて印象に残りました。

まぁ良くも悪くも大泉洋が抜けないけど、そこが好きって人にはハマると思う。リアクションが上手だしミッションはハプニングだらけだからその軽快なリアクションが面白くはまります。氷河期云々の蘊蓄はちょっとウザかったけどそのほかは良かったです。

訳も分からずミッションに振り回されたり四季の言動や行動に翻弄される姿がめちゃくちゃ似合う。本人は至って真面目なんだけど何をしてもコミカルさが滲む、その絶妙な塩梅がさすがだと思いました。クスッと笑える面白さがありつつ、冒頭の飛び降りシーンや、他人のネガティブな心の声に飲まれて心が疲れてしまう姿など、シリアスさや何もかも失った文太が抱える闇が垣間見れるところも人間臭さが出ていて良かったです。