愛しい嘘～優しい闇～

このドラマはこの人の演技力にかかっていたんだろう。その点では大成功だと思う。中野くんと雨宮くんをしっかり演じ分け最後に対峙するシーンは、あんな至近距離で風貌まで一緒なのにしっかりと全く違う別人に見えました。笑い方から立ち方まで全然違ってすごかったです。

中野と雨宮が対峙するシーン、顔も服装も全く一緒なのに表情や口調の変化で全くの別人に見えるのがさすがでした。特に雨宮は最後まで本当に救いようのないどクズで、最終回直前に登場したとは思えないインパクトがありました。中学校の教室で望緒と語り合う穏やかな姿も、死を覚悟した人間特有の悟ったような空気を纏っていて良かったです。

中野くんが顔まで変えて中野幸という人物まで葬り去ってしまって後戻りできないという切羽詰まった切なさに胸が苦しくなりました。一方雨宮の方では詐欺師が板につき性格悪そうに笑っているのが憎らしい。演じ分けが見事です。

雨宮と中野、2役の演じ分けが見事でした。特に雨宮の荒っぽい口調や相手を見下すような視線、品のない笑い方、内面のクズっぷりが短い回想シーンでも十分伝わってきて上手かったです。中野としての演技も「役に立った」「全部ウソだった」と望緒をわざと傷つけて遠ざけようとするシーンが切なくて、中野の望緒への愛の深さが感じられてとても良かったです。

見ている人たち全員から怪しいと視線を送られていたであろう今回（笑）とうとうみおにその違和感が伝わってしまい耳の形が違うことでばれてしまう雨宮くん。みおに横向いてと言われてぎこちなく向く雨宮くんの心臓の高鳴りがこちらにも聞こえそうなほど緊張してました。おまわず固唾を飲んでしまいました。

稜と殴り合うシーンで初めて感情をむき出しにする姿が見られたのが印象的でした。望緒と稜の仲の良さを気にしているし、望緒に描いてもらった似顔絵を目を潤ませて嬉しそうに見つめたり、望緒に「雨宮くんの全てを受け入れる」と言われた時の切なそうな表情など、望緒のことは本当に愛しているように見えます。演技を大きく変えてるわけではないのに、それ以外のシーンはどうも怪しくて信用出来ない空気が漂っているところも上手いなと思います。

そういえば初めから爽やかすぎて浮いていた（笑）今更言うのもなんだけど初めからおかしいと思っていたっていう些細なサインを出し続けていたのかとすごいなと思う。爽やかヒーローがひっくり返る時、今から怖くて仕方ない。

怪我をして殺されかけてるのに野瀬から必死で望緒を守ろうとしたり、望緒を壊れ物のようにそっと大切に抱きしめたり、望緒への気持ちは本物だろうなと伝わってくるのに、何故か怪しさや胡散臭さ、信用しきれない雰囲気が拭えない絶妙な演技が上手いと思います。何を考えてるか分からない怖さがあって、玲子がしつこく警戒する説得力があるところも良かったです。

ワイナリーに来た週刊誌記者を追っ払ったり、野瀬にカマをかけてDVの証拠をつかむ姿が鮮やかで格好良かったです。ただいまだにミステリアスなキャラクターなので、この冷静さや嘘の上手さ、頭の良さがちょっと怖いなとも思いました。望緒にかかってきた稜からの電話に出たり、望緒と稜が仲良くしてるとじっと2人を見つめてたり、嫉妬して牽制する姿が見られたのは人間味があって良かったです。

林遣都さんは数少ない素晴らしい俳優さんだと思っているが、こういうハイスペックでキザなエリート、しかも標準語はぜんぜん合わないのでキャスティングミスだと思う。朝ドラとか、芸人さんの役は最高でした。

DVの話をしている時の「心を傷つけられる」「声もあげられない」と実感が籠ったような陰のある表情や口調が印象的でした。過去に何かあったのかなと思わせるような意味ありげな感じがして、ますますミステリアスさが増しています。望緒と稜の仲の良さに嫉妬したり、望緒のほっぺをツンツンしたり、甘いシーンをサラッとこなすところも良かったです。

女癖が悪いという噂もデマだったし、二股かけてるかと思ったら母親の面倒を見る親孝行息子だったし、疑惑が晴れるたびに好青年ぶりが明らかになるのに、何かもっと大きな秘密を抱えてそうな怪しさが拭えないところが良いですね。いつも穏やかで笑顔を絶やさず、本心が分かりにくいところもちょっと怖い。善人か要注意人物なのか、どちらとも取れそうな表情と演技に翻弄されています。

人当たりも良いし紳士的だけど、どこか陰があって何を考えているのか分からないミステリアスさを感じさせるところが良かったと思います。1話はほぼ笑顔で誰にでも優しかったけど、たまにフッと真顔になったり、何かを考えるような表情をするなど、何か裏がありそうな意味深な姿も垣間見られ、どういう人なのかイマイチ掴みどころがないところも良かったです。