恋せぬふたり

引いてしまいがちの高橋さんと全部取りの精神で！っていうくらい欲張りな咲子。最初はチグハグなところがあり、押したり引いたりしながら間合いを取り、生活する2人に違和感がなくなっていくのが見ていて心地よかった。2人のバランスがとてもよかったと思う。

高橋さんの前で空回り気味だった咲子も一緒に暮らすうちに徐々に馴染んできた。少しうるさいような気もするけれど、明るさや自分にない考え方に触発されるってこともある。そんな自由奔放さととろけるような笑顔が可愛らしい。

主人公として愛されるキャラに演じるのは難しい役ですよね。脚本からして咲子の立ち位置はっきりしていないし。そのせいか演技プランも掴めてない感じに見えます。おかげでアロマアセク以前の問題ばかり目につくキャラクターに。

咲子は高橋羽と出会い、アロマンティック・アセクシャルを自認しはじめたばかりで、自分が理解できた、あるいは理解されたということでハイテンションになったり、それでも理解してもらえない人たちとのコミュニケーションに四苦八苦したり、すでにそれが当たり前として受け入れて時間がたっている高橋羽よりも、さまざまな面で「過程」にある存在です。その過程では感情の起伏や表現も変化していくわけで、岸井さんはそこをしっかりと見せる演技をしています。高橋一生さんとの対比が出るように工夫しているし、演技派らしい脚本や演出意図を見据えた背景のある演技だと思います。

家族の前で大号泣しながら自分の感情を話す場面で咲子のこれまでの重圧がよく伝わりました。周りの人は唖然としてたからそこまで追い詰めた認識はなかったんだろうけど、本人はずっと悩んでいたってことあるよね。喋り方が最後は子どもっぽくなったのも悩みが長年続いていたからなのかなと思いました。

アロマアセクじゃなくて、空気読めないとかそういったコミュ障害っぽい？とか思ってしまった。自分のモヤモヤしている部分を補足してくれるものを見つけたからって、今まで隠してきた感情から考えていきなりキラキラ目で大声で感情爆発とか考えられない。

恋愛に全く興味がないのは特に問題はないけれど、高橋さんを見つけた時のはしゃぎ方がいただけなかった。自分だって突っ込まれたくないことなのに大きな声で付き纏うのはちょっと違うかなと。あんなに目をらんらんとさせて来られたら引いちゃうよね。