となりのナースエイド

シムネスの患者を救いたいっていう思いは本物なんだろうけど、火神の中にそのためなら何をしても構わないっていう謎の価値観が芽生えているところにゾッとする。他人の論文を横取りしても罪悪感のかけらもなく「私が世に出してやったんだ」っていう傲慢さを感じさせ、罪を告白する引き換えに澪にオームスへの協力を仰ぐシーンも、論文横取りや殺人という罪の重さよりもオームス開発が何より大切だという火神の優先度が伝わってきて、腹立たしさや哀れさなど色んな感情が湧いてきて、見ていてすごく不思議というか、あまり経験したことのな何とも言えない気持ちになりました。

ナースエイド3人が猿田に脅されて仕方なく行っていたことをちゃんと理解していてお咎めなしで済ませ、全て私の責任だと深々と頭を下げる誠実で器の大きな姿が格好良かったです。取り繕ってる感じではなく、心からの言葉だって感じられるところも良い。話の腰を折りまくる澪や猿田を一喝するシーンも迫力があって良かったです。

真剣にオペの話をしていたのに、いつの間にか娘の恋バナに話題がシフトしちゃってたり、口出すなって怒られておどけたり、チャーミングな一面が垣間見れたのが新鮮で良かった。シリアスモードを崩さずにおちゃらける、独特な空気感も古田さんならではという感じで面白い。「星嶺医大は裏口入学出来るほど甘くはない」と堂々と宣言する姿も格好良かったです。

温厚な人格者で、シムネスの駆除のために情熱を注ぐ素晴らしい医師だけど、ただの良い人ではなく、目的のためなら倫理に反したことも躊躇わず行いそうな危うさも醸し出しているところが良かったです。オームスの治験室に移動する時の速足気味の歩き方や、治験が失敗した時の思い悩むような表情など、台詞が無くてもなかなかオームスの実用まで辿り着けない焦りや苛立ちが仕草や表情から伝わってきたところも良かったと思います。

記者会見を渋る竜崎に「病院の顔は君だ」「猿田じゃちょっとアレだろう」と遠回しに猿田の見た目をディスるシーンが面白かったです。その前の猿田がデスクにおでこをつけるくだりもそうだけど、猿田役の小手さんとのやりとりが良い感じに力が抜けていてアドリブのように小気味良くて、ベテラン同士の腕の見せ所って感じで見ていて楽しいです。猿田がとことん嫌な奴で桜庭や竜崎に敵意むき出しなので、二人の味方で穏やかな人格者の火神が登場するだけで何だかホッとします。