西郷どん

この人の演技を見ているだけで泣けてくる、と感じる数少ない女優。篤姫のときの幾島でもある。
この人から出る雰囲気、優しさ強さ凄みなど、この人本人が持っているものなのか？そのくらいに感じる

演技は正直あまり上手ではないと思います。結構セリフの棒読み感はテレビ越しに伝わってきました。ただ表情はよかったんじゃないでしょうか。その分セリフと表情にギャップができて余計に違和感になってしまう気がしました。

演技が上手なので大家族の肝っ玉かあさんという雰囲気は出ていたけれど、貧乏大家族なのにふくよか過ぎるのではないかと体型に目がいってしまう。だからといって松坂さんに痩せて欲しいわけではない。松坂さんはあのままで、裕福な役をやればいい。演技で体型はカバーできない。

大女優という印象が強いだけに、母親役と聞いて違和感がありましたが、観ているうちにおおらかな包容力のある松坂さんの演技に引き込まれました。地味な着物に老けメイクなのに、とても母性的な美しさを感じました。

貧しいけれども、家族全員仲が良く、助け合って日々を一生懸命に生きている西郷家のお母さん役は、松坂さんにピッタリでした。おっとりした優しい喋り方と、温かい陽だまりのようにニッコリ微笑まれるところなど、見ているほうも癒されてほっこりした気持ちになりました。早々に亡くなられてしまう役だったのが残念です。

貧しい家庭なのにちょっとぽっちゃりしている感じがどうかなと思いましたが、誰に対してもやさしく、子供のために必死に祈っている姿が印象的でした。自分は食べなくていいからと海のように大きく深い母の愛情があふれていて久しぶりに懐かしいいい人に出会えた感じがしました。

7話で吉兵衛から「日の本一の嫁を自慢して何が悪かか」と言われた時の照れたような嬉しそうな笑顔が印象的でした。吉兵衛との幸せだった日々を思い出しているような笑顔で、メイクは薄いし髪もボサボサなのにとても美しかったです。吉之助の背中で最期を迎えるシーンでは、穏やかな話し方の中に吉之助への強い母の愛情が感じられ、胸が熱くなりました。

6話でジョン万次郎を世話する姿が印象的でした。ホッと安心出来るような温かい雰囲気があり、優しく落ち着いた表情と話し方から万次郎を労わり助けてあげたいという満佐の思いやりが感じられました。故郷の母親を思い出すような母性溢れる演技が魅力的です。

西郷隆盛の母である満佐の役の松坂慶子さんは、この役に、とても合っていると思いました。西郷家は下級武士の家柄で子だくさんの上、貧乏でした。
しかし、その貧乏を吹き飛ばすような松坂さんの明るさは、西郷家支えていく満佐そのもののように想像できました。

松坂さんの持つ温かい雰囲気と明るい笑顔が役に合っています。しっかりした肝っ玉母さんですが、決して男勝りなわけではなくて女性らしいチャーミングさも感じられるところが魅力的だと思います。1話で吉之助の腕が治りますようにと祈る場面が印象的で、地面に頭を擦り付けて必死で願う姿に、母親としての深い愛情が感じられて胸が痛くなりました。