アトムの童

「社長は汚い金を稼ぐ人間じゃない」と皆の前ではっきり言い切る姿が興津への深い信頼を感じさせました。議長代理を務める時の安定感もさすが。那由他の発言中も後ろでソワソワしたり、頷いたり、頭を抱えたりと、照明がほとんど当たっていなくてはっきり映っていなくても、吉崎の胃が痛い状況が細かな演技でしっかり伝わってきたのも良かったです。オリンピック種目に選ばれた時の「イエス！」という渾身のガッツポーズも、いつもクールな吉崎には珍しくてインパクトがありました。

興津が警察に連行される時に「今から大事な株主総会があるんです」と前に出て阻止しようとしたり、「社長」と心配そうに声をかけたり、短い場面だけど声のトーンや表情で興津への忠誠心の強さやSAGASを守らなければという責任感が伝わってきたのが良かったと思います。SAGASにとって不利な状況を報告する時も、表向きは普段と変わらず平静さを保って仕事しているけど、一人になると早歩きだったり前のめりだったりと、歩き方や仕草で内心の焦りや逸る気持ちを表現しているところがプロ意識の高い有能な秘書らしくて良かったです。

感情的になって苛立つ興津とは対照的に、表情は歪ませつつも平静さを保ち、秘書としての仕事をしっかりこなす姿が印象的でした。ただの嫌味な秘書としか思っていなかったけど、吉崎の有能さが垣間見れて、気難しそうな興津が秘書として傍に置いておく説得力を感じて見直しました。

アトム玩具がベストワン賞を獲った時に「おまけみたいなモン」と嫌味を言うシーン、興津がお祝いを言った直後だし秘書が口にする必要のない一言なんだけど、つい言ってしまう底意地の悪い感じが吉崎らしくて良かったです。またその言い方がネチっこくて心底小馬鹿にした感じで、1行程度の短い台詞なのに吉崎の性格の悪さが全部詰まってるようなインパクトがあったのもさすがでした。

片頬だけ引き攣ったり、眉毛を大きく顰めたり、目を見開いたり、アニメのように自在に変わる表情が印象的で、興津の後ろに控えていることが多いけど存在感があります。でも決して悪目立ちすることはなく、メインの芝居を邪魔しないところも良いですね。クセが強い役が多い方なので興津を裏切るのかな？罪を着せられるのかな？などその存在だけで色々と考察が楽しめるところも六角さんならではの魅力だと思います。