バベル九朔

シンプルに演技が下手

表情に乏しくていまひとつ。小さい頃に失踪してしまったお父さんに逢いたい気持ちや、バベルの中に取り込まれてしまった親友の健への喪失感などが、あまり伝わってこない。周りの個性豊かな俳優陣の存在感は強いのに、主役の色が見えてこない。もったいないなと思う。

バベルという仮想空間に戸惑いながらも、雑居ビルの住民や友人、更に謎の白い服を着た少女にまで思いを向けながら、彼らを救い出すために奮闘するという、ピュアでセンシティブな演技が、独特の不可思議なドラマ空間の中で凄く良い味を出していると思います。

万城目学作品の実写化となると、あの不思議な世界観に溶け込めるかがほぼ唯一の判断基準になると思うのですが、思った以上に演技が自然で驚きました。あまり演技仕事をしていないのに作品と役をしっかり理解して演じているのが分かるので、好感が持てます。

アイドルとは思えない程の演技力で細かい仕草やセリフがないシーンも顔の表情だけで九朔の心情を表現してます。CGのシーンも本当にそこにいるかのような動きで作品の世界観に吸い込まれていきます。小説の世界観も崩すことなく演じてました。