エルピス —希望、あるいは災い—

報道という民意を一気に動かせるものは権力者にとって最大の脅威だと思う。だからそこに出ないようにありとあらゆる手を使う。斉藤も駒でしかないのかもしれない。斉藤が尤もらしく小さな悪事を暴くことで国家が揺らぐと言っていたが、そんなことが分かっていながら身綺麗でいなかった政治家を責めるべきだろう。そこに忖度をし世の中がもっと汚い世界になっていくのを止められないのをよしとするのが気持ち悪いと思った。損して得とれではないけれど、当初の目的は達せられた。逆を言えばそれしか達せられなかった。深すぎる闇を見たような気がした。

最善の終わらせ方という印象かな。大門副総理を真犯人隠匿で、恵那に名指しで報道してほしかった気もするけど。本城晶が逮捕されたことは良かったけど、大門を潰しておかないとまた同様のことがこの先起こる可能性はゼロじゃないってことでしょ。斎藤さんは色んな意味で賢すぎて、なんだか引いてしまったし、人としての魅力が失せた。

組織の中ってどこにだって善玉も悪玉もいていろいろ大小問わずずるいことしてるもんだ。全てが善で全てが悪にならないのがこの世の常で気持ちの悪いところ。そこに目を瞑って生きていると恵那のように薬が手放せなくなったりする。この世の悪を裁く気満々で報道にやってきたなら尚更だろう。会社と離れても真実を追う岸本と、長いものに巻かれて動きが取れなくなってきている恵那と、器用に立ち回りながらも向こう側に行ってしまっている斉藤。村井が暴れてその３人の目が覚めるのか？あまりにも大きな敵だけど立ち向かって、その先にある何かを見せてほしい。

大門亨さんは絶対口封じに殺されたんでしょ。精神科の通院歴があるというのも、マスコミなんかにかぎ回られないように大門副総理がでっち上げて処理したんでしょうよ。まあ、見るからに生気のない感じだったし、あの姿を見てたら自殺と言われても不思議じゃないけど、拓郎と電話で話してた時は、もう一点の迷いもないし、いつでも連絡くれれば駆けつけるって吹っ切れたように言ってたものね。
斎藤さんが大門の秘書みたいな立ち居振る舞いで、葬儀場でメディア対応していた姿にはガッカリした。

10年以上も真実に口をつぐんで隠ぺいに加担してきた平川刑事みたいな人が、ある日突然心を入れ替えて正義に目覚めるなんてことやっぱりないよね。一番肝心の本城の写真データを抜いてるとか悪質極まりない。けれどそれよりも、お金さえもらったら猟奇殺人犯さえ平気で逃がして更には無実の人を犯人に仕立て上げ、今も平然と公権力の座に座ってる大門こそが、犯人よりもずっと悪辣で罪深い気がするわ。もし本当に一連のことを大門が圧力かけてやってきたのならね。

実は無実の松本さんを犯人に仕立て上げたのは警察だと、自分たち組織の闇をたったの５０万円でバラしてしまった平川刑事の話ってホントに信用していいのかなあ。まあ少なくとも、15年前のことより直近の事件を調べたほうがいいというアドバイスはまともだし、なるほどな感じだけど。

村井さんの言った何が潜んでいるか分からないところで棒切れを振り回すという表現が全てだったのだと思います。掴んだ！と思ったネタも世間の注目はさらったけれど、重要人物はどこかに隠れてしまったし事件の方では前進ではなく後退したと言った方が正しいのでしょう。森の奥の奥にいる魔物は番組をひとつ潰して関係者を左遷したくらいで許してくれないだろう。恵那だけが得をしたみたいになっているけど多分それも今のうち。斉藤が別れを告げるタイミングがえぐい。番組前に言ったことにどんな意味があったのか興味深かった。

冤罪事件の報道に大門副総理が圧力をかけてくるってことは、それに大門が絡んでるってことでしょ。その大門は、事件があった土地の有力者らしい本条建託と密接なつながりがあるみたいだから、単純に考えると真犯人は大門か本条の周辺の人間ってことになるのかな。
メールのメッセージだけで恵那に別れを告げた斎藤って、利己的で身勝手な人だと一瞬思ったけど、それは恵那を守ろうとしての決断だったのかなとも思ったり。何を考えているのか、絶対的にわかりにくい人だけど。

今回は村井に覚醒させられた岸本の反抗期ってところでしょうか。憔悴しきったお母さんは気の毒だったけれど、お母さんが本当の意味で嫌いになったわけではないでしょう。あの頃の自分の不甲斐なさを丸ごとお母さんのせいにして切り捨てることで過去を捨てたかったのでしょう。ただね、どこまでやっても自分ができなかったことは忘れたくても忘れられないもんです。その罪は消えないけれど、新たな罪は重ねない。これで一皮剥けて大きく成長するでしょう。

得体のしれない相手からの真偽不明な情報提供に、すぐにお金を払ってしまうなんて、岸本って本当に世間知らず。馬鹿と言ってしまうにはあまりに純粋すぎて、可哀そうになるわ。恵那と斎藤の関係って、元恋人同士というよりなんだか恵那が斎藤に上手く操られてそう。それにこの二人のベッドシーンは、特に描かれなくても良いのでは？。余計な付録って感じで退屈した。

人生って勝ち負けだけ考え出したら圧倒的に負けることの方が多いと思うからしんどいよね。拓朗だっていい家に生まれていい学校に入れてもらっていい育ちをしたと思うよ。だけど、その中でも上には上がいるもんでそういうところほど勝ち負けにこだわるんだと思います。（例えば同じタワマン内の階数とかね）とてつもなく下らないって思えなければ一生苦しいままよ。でも拓朗は正しいことをしたいと口にした。死んだような目をした拓朗が心配ではあるけれどきっと覚醒してくれると信じている。

事件の行方もとても気になっているんだけれど、恵那と斉藤の酸いも甘いも知り尽くして別れた後のカップルのやり取りを見ているのがとても面白い。恵那の体調が見るからに悪くても嫌なところに来ちゃったなとでも思ってそうな斉藤。トイレで吐いてても背中をさするどころか音を消して近づきもしない斉藤。なのに号泣する彼女を見ると頭を撫で、吐いた直後なのにキスを迫られれば応える斉藤‥。ツッコミどころ満載だよ。斉藤は恵那に企画をやめるように言いに来たのか？それともどうしたら放送できるかアドバイスに来たのか？一夜から目覚めた恵那の目から感じ取れることが少なくて全部語られないのがもどかしくて面白い。

恵那と斎藤が真剣にディスカッションしてる横で、彼らの路チュウ写真を検索する岸本って、よほどの無神経か大物なのか....。でもどっちにしても恵那に引きずられてやらされてる感ありありで、何かにつけて面倒くさそうな言動も好感持てない。被害者のお姉さんと会って話をしてる時、恵那の横に座って見せてる神妙な顔つきもわざとらしい作り物に見えてくる。　
すみかさんが事件について顔出しでインタビューを受けてたのは勇気ある行動だと思し心情的には理解できるけど、彼女自身が結婚して子供もいる今、そうしたことで彼女やその家族がまた何かイヤな思いをするようなことがなければいいけどね。

近年見た日本のドラマの中でダントツの良作。クオリティ高すぎて地上波を見ている気がしない。脚本も素晴らしいし俳優さん達もすばらしい。

事件を丁寧に検証していけばおじさんが犯人の可能性は限りなくゼロに近いと分かったはずなのに、違う人を見たって言う目撃者もいるのに、どうしてあんな不当な逮捕ができたのか。それはやっぱり弁護士が言う通り家族もいなくて大きな後ろ盾もない、声を上げてもすぐにかき消されてしまいそうな一市民だからだったのだろう。そこに見ず知らずの女の子がいればそういう趣味なのだと世論も動いてしまう。マスコミにその波を作った自覚はあるのか？正す勇気はあるのか？問われていると思う。

組織の都合なのか何なのか、警察が何の罪もない人を犯罪者に仕立て上げるって怖すぎ。マスコミも、松本さんとは似ても似つかない男を見たという目撃証言を自分たちで報じていたのに、絶大な権力には平気で巻かれて素知らぬ顔を決め込むものなんですね。
恵那と斎藤は互いに嫌いになって別れたわけじゃなさそうね。雰囲気の似通った素敵な大人の二人だし、互いに本心も話せるようになった今ならもう一度やり直せそうな感じもするけど。

期待していたドラマだっただけに残念な内容。まず脚本が悪い、地上波の連ドラを分かっていない。

冤罪と言えどまだまだ証拠は不十分で雲を掴むような話なのにどうして浅川が乗ったのかがとても不思議でしたが、摂食障害になるほど自分のしてきた汚い仕事に誇りを持つために引き受けたのかなと思いました。ただその企画を聞いたプロデューサーが血相を変えて説教したのもあながち嘘じゃない。それだけ寝た子は危険ってことだろう。路チュー写真で更迭されたのは浅川だけだったことから斉藤は守られていると感じた。いつ寝返っても不思議ではなさそうだ。