フェルマーの料理

「お前が説明しないと分からない」と岳に掴みかかるシーン、短い場面だったけど見応えがあって良かったです。中国語で激しく捲し立てる姿も迫力があって良かったし、いつも穏やかで大人な王らしくない、感情を剝き出しにして怒る姿が印象的で、それだけ皆の精神状態がギリギリでいっぱいいっぱいなんだと伝わってきたのも良かったと思います。

あんこうの臭みを取るスパイスを教えてあげたり、試食の時には目一杯褒めてあげたり、広瀬に料理を食べて貰えた時にはグータッチして称えたり、追い抜かれて色々と思うところあっても、仲間のために尽力して成功を共に喜べる姿が格好良い。後輩のサポートに回されても腐らずに自分が今出来ることにしっかり取り組む姿が、プロの料理人のプライドと王さん自身の実直な性格を感じさせて良かったと思います。

自分も蘭菜のように斬り捨てられるのではと不安に陥りつつ「頑張るしかない、必死にやるしかない」と自分を奮い立たせるところが格好良かったです。前回、前菜の件で岳を責めなかった時も思ったけど、周りがどうこうではなく常に自分自身と戦っているストイックさが、一人前の料理人になるという覚悟の強さと自分への自信が感じられて良いですね。岳に蘭菜への協力を頼まれた時に「何をすれば良い？」と自ら尋ねに行くところも頼もしかったです。

「優秀な前菜だった」と岳が褒められた時の改めて気を引き締めるような緊張した表情が、王にかかるプレッシャーの大きさを感じさせて、見ているこちらまで胃が痛くなるような心地がしました。綿貫のレビューで岳の前菜とのバランスについて言及された時に、岳を責めることなく自分の確認不足を反省する姿も、王の誠実な人柄とプロとしてのプライドが感じられて格好良かったです。

流暢な中国語もさすがだし、片言日本語もちゃんと「来日した中国の方」らしいイントネーションを再現していて役柄の設定に説得力がありました。興奮気味に岳の賄を絶賛するところや、にこやかに自己紹介する姿も、王の人柄の良さや料理への情熱が感じられて良かったと思います。