フェルマーの料理

ザ・漫画キャラって感じの役だったけど、特徴はしっかり掴み存在感を示しつつ、やり過ぎて周りから浮くことなくちゃんとドラマのキャラクターとして成立させていたのがさすが上手いなと思いました。声が通るから、小声で囁くような台詞や淡々とした早口でもしっかり耳に残るところも良かった。新しいお店でまた海たちと一緒に働く姿が見られたのも嬉しかったです。

岳と二人で話すシーン、真っ赤な目や悔しさや悲しさが入り混じったような表情、震える声、いつも冷静な寧々らしくない感情的な姿がとても良かったです。海を変えてくれるかもしれないという岳への期待や、Kを守りたいという強い思い、それらを岳自身に壊されてしまった憤りや虚しさ、寧々の色んな思いが伝わってきて見ていて切なかったです。

岳のことを心配する時の少し不安げな表情や労わるような口調が、普段の淡々とした寧々には珍しくて印象に残りました。孤高を極めた海を一番近くで見てきた寧々だからこそ、それがどれだけ辛く孤独なものかよく分かっていて、優しい性格の岳は大丈夫なんだろうかって本気で心配しているんだろうなと伝わってきたのが良かったです。

海と蘭菜のやりとりや、岳に「海さんと一緒に料理がしたい」と縋られる姿を見ている時の、ポーカーフェイスだけど何か思うところもありそうな絶妙な表情がとても良かったです。寧々はきっとすべてを知っているんだろうなって伝わってきます。その後の海への言葉も、淡々とした口調の中にも海を心配し気遣う思いやりが滲み出ていて、単なる従業員とは少し違う心の距離の近さが感じられたのも良かったです。

料理を前にすると「美味しいです～」「良い香り」と声のトーンもテンションも上がってニコニコしちゃう姿が普段の淡々としたポーカーフェイスっぷりとギャップがあって親近感が湧きます。モグモグとご機嫌な表情で食べてるところも可愛い。岳が孫六を励まそうと近づいた時に無言で遮るシーンも、周りの空気や相手の機微に聡い寧々の丁寧さや観察力の鋭さを感じさせて良かったと思います。

「お荷物まとめておきました」と淡々とした様子で蘭菜に告げる姿が、個人的な感情を一切見せない寧々らしくて良かったです。引き留めたり分かりやすい労いの言葉をかけることはないけど、本当に海が母親の心を壊したのかと問う姿が、蘭菜をこのまま辞めさせてはいけない、海の真意を知って欲しいという寧々なりの気遣いと誠意を感じさせたのも良かったです。

朝倉と蘭菜のやりとりを聞いている時の意味深な表情、二人の間の因縁や蘭菜の目的など、全ての事情を把握しているんだなと瞬時に伝わってきたのが良かったです。スタッフの中で唯一知っていたようで朝倉からの信頼の厚さが感じられるのも良かったし、知性を感じさせる流れるような台詞まわしやスピーディーで優雅な給仕姿も寧々の有能さを感じさせ、その信頼に値する説得力があったのも良かったと思います。

岳は雇い主じゃないからと、自分の家みたいに寛いでまったりしてる姿が可愛らしかったです。海が帰宅した時のスピーディーな片付けっぷりと取り繕い方も何だか手慣れていて、いつも海がいない時はこんなふうに休憩してるのかなあって想像ついちゃうところも良かったです。海と岳のやりとりの後ろで、自分のヘッドホンを後ろ手に隠したり、掃除するふりしてビールの空き缶片付けたり、こっそり証拠隠滅してる姿も面白かったです。

アニメキャラのような話し方や佇まいだけど、さほど違和感がなくて周りにスッと溶け込んでいるところが良いですね。大きな口を開けて幸せそうに賄を食べる姿や満足げな笑顔も、普段のポーカーフェイスっぷりとギャップがあって良かったと思います。