イグナイト -法の無法者-

桐石への「綾さんは絶対に助ける」という言葉が口先だけの薄っぺらいものに聞こえないところが良かった。桐石の妻への深い愛情をちゃんと理解しているからこその重みと責任が感じられて、どんな手を使ってでも約束を守るという覚悟が伝わってきました。桐石が信頼して委ねるのも納得。自分たちの目的はしっかり果たしつつ、決して仲間とその大切な存在を蔑ろにしない姿が格好良かったです。

冒頭の伊野尾たちにバス事故の話をするシーン、娘のことを口にする前の間や唇を噛みしめる姿、絞り出すような苦し気な声が、娘を失った深い悲しみと悔しさ、真相を闇に葬った者たちへの強い怒りと憎しみを感じさせました。市長や吉野と対峙した時の感情的な怒鳴り声や凄みのある表情も、どんな手を使ってでも絶対に真相を暴いてやるという執念と覚悟を感じさせる迫力があって良かったです。

事務所に戻って来た高井戸に「よう」っていつも通り声をかけたり、「反抗期は終わったか」と軽口を叩いて迎え入れる姿が轟の懐の深さ、大きさを感じさせて良かったです。「ん？」って惚けて誤魔化すお茶目な表情もチャーミングで良かった。市長と対面するシーンで見せた刺すように鋭い眼差しで声を荒げる姿も迫力があり、強い憎悪と怒りが伝わってきて印象に残りました。

桐石に丸投げしたまま、途中経過なども確認せず何の心配もしていない姿が、桐石への絶大な信頼を感じさせました。自分の正義、価値観を押し付けがちな宇崎と違い、毎回ご遺族の意志を尊重して気持ちに寄り添う姿も、金儲けだけではない轟の弁護士としての信念を感じさせて良いと思います。ご遺族に誓った「必ず勝ってみせます」という力強い言葉も頼もしくて心強かったです。

怪我をしてる宇崎を見ても動じることなく、詳細を聞かなくても何があったのか察してる姿が、宇崎のことを分かってる感が出ていて良かった。宇崎が差し入れたお弁当を誰よりも美味しそうにバクバク食べてたり、いつもの決め台詞を宇崎に横取りされて「それ、俺のパクりな」ってムキになったり、一見アウトローっぽい見た目と子供みたいな一面のギャップもチャーミングで魅力に感じます。

桐石に「大好き」「友情が愛情に変わった」ってふざけて絡む姿や、仕事を頼む時の「絶対に断られないだろう」っていう妙な自信に満ちた態度が、気心の知れた同期ならではの距離感や信頼関係を感じさせました。ラストの宇崎とのやりとりで見せた憤りや憎しみが滲む鋭い視線や表情も、普段の飄々とした顔と別人のようで印象に残りました。

母親に委任されてるって平然と嘘をついてカマをかけたり、「大丈夫じゃない、今のところ違法だ」って堂々と開き直ったり、違法になる前に両親を説得しろって宇崎に丸投げしたり、肝が据わって頼もしいかと思いきや、無責任だったり適当っぽかったり、次々と色んな顔を見せる掴めない感じが良いですね。宇崎の熱血正義感でヒートアップした空気をほどよくクールダウンしてくれる飄々とした雰囲気と軽妙な台詞回しも魅力に感じます。

場をビシっと締める重厚感がありつつ、相手をわざと煽るような口調や「争いを起こせば良いんだよ」とさも当然かのように笑顔で口にする姿など、「ちょっとヤバそうな人」っていう雰囲気も漂わせているところが良かったです。法廷での余裕たっぷりな姿も頼もしくて、どれだけ劣勢でもこの人なら絶対何とかしてくれるっていう安心感があったし、伊野尾とドーナツをめぐって言い争いをするシーンもチャーミングで親近感が湧きました。