華麗なる一族

鉄平と一緒にお酒を飲むシーン、明るい口調で冗談を言ったり「鉄以外にも楽しいことはある」と気晴らしを進めたり、銀平なりに鉄平を気遣って労わる姿が良かったです。鉄平と一緒にいる時は普段吊り上っている眉毛や目尻も下がり気味なってリラックスしているのが分かるし、口調も穏やかで明るくて、兄を慕っているのが伝わってきます。こういう表情を見るたびに寧子の「本当は優しくて良い子」という言葉が思い出され、気を張って尖って生きる銀平がより切なく見えるところも深みが出て良いですね。

鉄平を責める相子に「そこまであなたが言う必要はない」と割って入ったり、早く休むようにと心配そうな表情で気遣う姿が印象的で、銀平の優しい一面が垣間見れた気がしました。鉄平の前では口調も穏やかで笑顔を見せていたし、あんな状況になっても態度は変わらず、兄として尊敬して慕っているんだろうなと兄弟愛が感じられたのもなんだかホッとしました。鋭かったり、虚ろだったり、少し潤んでいたり、表情が大きく変わることはないけど、目の演技で銀平の繊細な感情を表現しているところも上手いと思います。

万樹子の流産と大介からの後継者指名を聞いたあと、呑んだくれて荒れる姿がとても良かったです。どうやっても万俵家から逃れられない自分を嘲笑っているようにも見えたし、笑っているけど孤独と焦燥感も強く感じられて、銀平の繊細さがよく出ていたと思います。

ヨットに乗っている時の楽しそうな笑顔や晴れやかな表情が印象的で、大介の「銀平はヨットに乗っている時は別人みたいだ」という言葉に説得力がありました。あまりに普段の険しい顔と違うので、ヨットで海に出ている時だけが今の銀平にとっては素でいられる時間なのかなとちょっと切なくもなりました。

章子と一緒にいる時の穏やかな表情が今の眉間に皺の寄った厳しい顔と全然違って、彼女のことを心から愛していたことが伝わってきました。冗談を言ってからかったり優しく笑いかけたり、幸せそうな姿が切なくて、章子との別れも今の拗らせた性格の一因なのかなと感じました。章子の名刺をそっと丁寧に内ポケットにしまう仕草も、彼女を今も大切に想っているように感じられて良かったです。

いくら愛のない結婚でも一緒に過ごしていれば少しは情が湧きそうなものだけど、万樹子への態度も視線もとことん冷たくて銀平の捩れた性格を感じさせます。石川に「新婚生活は上手くいってるのか」と訊かれた時の無理に笑顔を作ったような不自然な表情や曖昧な口調も、社交辞令の苦手さや同じことを何度も訊かれる苛立ちが伝わってきて良かったと思います。

いつもは投げやりで本心を見せない感じですが、万樹子に寧子を侮辱された時の激怒っぷりで初めて銀平の心の内が垣間見れた気がしました。「母を侮辱することは絶対許さない！」と今まで見たことのない凄い剣幕で怒鳴っていて、軽率な言動をする万樹子に対しては勿論ですが、母を大切に思う気持ちやどうにも出来ない自分への怒り、もどかしさ、苛立ちなど色んな思いが込められていて、怒っているんだけど表情はとても辛く苦しそうに見えたのも印象に残りました。

寧子の怪我の手当てをしてあげるシーンが銀平の寧子を大切に思う気持ちが伝わってきてとても良かったです。壊れ物を扱うようにソッと手を取ったり、泣き出す寧子の手を握ってあげたり肩をさすってあげたり、普段の冷たくなげやりな態度とは別人のような優しく、でも哀しそうな表情を浮かべていたのが印象的でした。大介と言い合う鉄平への冷めた対応も、2人の性格の違いを際立たせていて良かったと思います。

お見合いの席であんなに態度が悪かったのに寧子に「銀平さん」と優しくたしなめられるとちゃんと言うことを聞くところや、寧子の傷ついた顔を見た時の気遣うような複雑な表情が息子らしい母への愛情を感じさせて良かったです。こんな家庭環境じゃなかったらここまで拗らせてなかったのではと思わせる根の素直さが滲み出ているところも良いですね。ただせっかくの良い役なのに撫でつけた髪型があんまり似合ってないのがちょっと勿体ないです。

鋭い視線や淡々と無駄のない口調、感情に流されない冷静な態度が銀平の切れ者っぷりを感じさせました。職場で鉄平を見つけた時の笑顔や、仕事への情熱を語る鉄平を見つめる眩しそうな表情も、兄への憧れや羨ましさが伝わってきて良かったと思います。