華麗なる一族

まさに、公家のお嬢様！と言った所でしょうか。鈴のなるような声とはこの事ですね。
華麗なる一族は寧子さんが好きなのですが、麻生さんの演技が素晴らしかったです。
もっと寧子さんが見たかったのですが、出番が少なかったです。こんなお母さん、息子達は大好きだろうに。お着物もお似合いでした。

二子の結婚式の話で盛り上がる大介と相子にあからさまに不快感を表す姿が印象的でした。2人の前だといつも消え入りそうな弱々しさなのに、棘のある口調で「二子が疲れてしまいます」と相子に意見したり、表情も不服そうで苛立っているように見え、母親として娘の幸せや尊厳が蔑ろにされていることへの強い怒りや憤りを感じさせました。口数が少なくて控えめでも、親子らしいやりとりの場面が少なくてもちゃんと子供たち一人一人への愛情が伝わってくる演技がとても良いですね。

帰宅した鉄平に駆け寄って腕を撫でてあげる姿が子を労わる母親そのもので、心配でたまらずいても立ってもいられなかったんだろうなと寧子の心痛がひしひしと伝わってきました。鉄平を責め立てる相子に「もう止めて」と絞り出すように頼む姿や、二子の閨閥結婚をどんどん進める大介と相子に何か言いたげな表情にいつもの弱々しさがなく、強い憤りや怒りを滲ませていたところも母の愛を感じて良かったと思います。

大介が鉄平と食事をしたと訊いた時の明るく弾んだ声、万樹子の流産を知らせた時の銀平の態度を見た時の哀しげな表情、不謹慎な発言をした三子をたしなめる姿など、8話は寧子の母親らしさが多く見られ、そのどの表情にも愛が感じられて、彼女にとって子供たちの存在だけが生きる希望・意味なんだなと再認識させられました。

二子が細川との約束をすっぽかすシーン、「披露宴に行った」と嘘をつく相子の思惑を全く理解していないところが根っからのお姫様育ちらしさがよく出ていたと思います。どうして嘘をつかなければならないか、その場の状況を思えばすぐに理解出来ることなのに、それが出来ないところが駆け引きや腹の探り合いなどとは無縁だった寧子の人生を感じさせました。このちょいちょい空気が読めない感じが相子に「無能」呼ばわりされる説得力があって良いと思います。

大介に叱責された鉄平を心配する姿が普段の弱々しさとは違う、母親らしい包容力と温かさがあってとても良かったです。敬介がらみの話になると一瞬目が泳いで動揺するけど、必死で平静を保って感情を悟られないようにしていて、絶対に秘密を明かさないという強い意志が感じられました。除夜の鐘が聞こえた時に一番に「除夜の鐘」と嬉しそうに微笑む姿も可愛らしかったです。

皆の前で大介に「遅い！」と怒鳴られてもにこやかな笑顔で「すみません」とゆったり答える姿が根っからのお姫様育ちという感じが出ていて良かったと思います。和服が本当によく似合っていて上品で美しく、所作や歩き方もスーッと流れるようにたおやかで綺麗なところもさすがです。

儚げで弱々しくて守ってあげたくなるような雰囲気があって、あの銀平が大切そうに優しく接する説得力があります。「そうでございましたわね」など上品な言葉遣いも自然で、寧子の周りだけ時の流れがゆったりしているように感じるところも公家出身という育ちを感じさせて良かったです。

おっとりした話し方と抑え気味の声、ゆったりとした所作が寧子の育ちの良さや世間知らずぶりを感じさせて良いですね。相子の存在と大介への罪悪感と子供たちへの愛情と、色んな思いを1人で抱え込んでギリギリの状態で日々過ごしている様子が、今にも消え入りそうな雰囲気から伝わってきます。蘭の世話をしている時の穏やかで楽しそうな表情も印象的で、温室にいる時だけが本来の自分になれる癒しの時間なんだろうなと、見ていて切なくなりました。

もう少し若ければ相子も似合いそうだなと思っていたけど、寧子の哀しく儚げな演技もとても良かったです。和服も結った髪もよく似合っていて、あからさまな相子の色っぽさとはまた違った、ほのかに薫るようなしっとりした色気が素敵でした。相子を前にした時の伏し目がちな表情や遠慮がちな口調が万俵家における2人の力関係を感じさせたところも良かったと思います。