最愛

甘ったれの坊ちゃんのイメージは変わらなかったけれど、お母さんへの純粋な愛情は心を動かされました。お母さんの会見の時、甘ったれは甘ったれなりに今後の真田家を託されたんだと頑張るよと言っているように思えました。

梨央への敵対心からあまりいいイメージがなかったです。梨央を社長とも認めておらず、ただの妹として接してるところから真面目な梨央と後藤のデータでまともに今後を考え始めた姿が印象的でした。

梨央ともんじゃ焼きを食べるシーン、社長として今後について話す梨央と「母さんの代わりに逮捕されても良かった」とあくまで息子として話す政信の対比が良かったです。政信にとっての最愛は母の梓なんだろうな。これまで何かと梨央を敵視していたけど、辞任会見前には梨央にネクタイを直してもらったり、「頑張るぞ」というように梨央の腕を叩いてエールを送るなど、初めて兄妹らしい姿が見られたのも嬉しかったです。

若い頃はできの悪い駄々っ子の赤ちゃんみたいだったけど、だんだんと大きな会社の社長として成長が見れました。立派な大人になったのに梓さんの会見を遠くから見ている政信はまるでお母さんを恋しがる子供のような表情にも見えてなんだか泣けました。その中でもしっかりやるよと言わんばかりに頷く彼、お母さんの意志を継いで頑張って行くんだろうな。

梓の会見を見つめる表情がとても良かったです。特に目の演技が印象的で、「信じられない」というように目を見張ったり、辛そうに目を潤ませたり、母の姿を一時も見逃すまいと必死で見つめていたり、目を見るだけで政信の最愛は梓なんだろうなと確信できるくらい、色んな感情が伝わってきました。良いお芝居をする俳優さんなのに扱いが勿体ないなと思っていましたが、やっと本領発揮というか、繊細な表現力をしっかり見せてくれたと思います。

達雄の死体遺棄にショックを受けていたり、冷静な梓の態度に違和感を抱いたり、ごく普通の感覚を持った人間らしい反応が印象的でした。性格最悪な兄で嫌いだけど、こういう事件とは無関係そうな第三者目線の素直な反応を見るとホッとします。こういう反応や言動が、温室育ちというか内面が梨央よりもずっと幼く甘えがあるように見えて良いと思います。

何の説明がなくても、あらゆる面で梨央より劣っているんだろうなと思わせる演技がすごい。話し方なのか、仕草や佇まいなのか、具体的にどこがと言えないんだけど、この人に会社を任せたらヤバそうっていう無能さが滲み出ています。小さな頃から梓の息子である自分は特別な存在なんだと勘違いして育ってきたんだろうなという甘えや内面の幼さが梨央への敵対心や加瀬への横柄な態度から伝わってくるところも上手いと思います。

莉央と本当に血の繋がった兄弟とは思えないほど、彼女を敵視してる感じ。いくら長年離れて暮らしていても、兄妹の情みたいなものはありそうに思うけど、彼にあるのは嫉妬心のみ？。なんだか言動も幼稚だし、真田グループ会社集まっての会議の場でも、私情をはさみまくりのイヤミな発言をぶつけてたしね。

10年以上経っても全然中身が変わっていないことがほんの数秒の出番でもしっかり伝わってきました。あからさま過ぎる梨央への嫉妬と不満が子供みたいで、梨央の優秀さがより際立つところも良いと思います。会議で後藤に責められる梨央を笑いを堪えるような顔で見てるところや、当てつけのような嫌味ったらしい口調も政信の人間の小ささが滲み出ていて良かったです。

元々細身の俳優さんだけど頬骨が出ちゃってどうしたの？クスリでもやってるキャラなの？心配なほど痩せてしまっていますね。怪しいキャラの伏線ならいいけど、ちょっと心配するレベルです。いつまでもりおに勝てない不貞腐れ顔、その中に甘ったれがまだいる感じは好きです。

同じ両親から生まれたのにどうしてこうも違うかねっていう残念な兄。うまい対比でいいんじゃないでしょうか？妹は薬学部に入るほど秀才なのに車を動かせないことを言葉で説明することも難しいなんて恥ずかしすぎ。おかげでこのバカにはこの犯罪に関わるなんて無理だなと候補から外した。車ガシャーンって幼稚園児か！（笑）

梨央に対する小馬鹿にしたような態度や上から目線の口調など、敵意むき出しのクズっぷりが上手いです。加瀬にまで八つ当たりする器の小ささや、梨央にはあんなに偉そうなのに、愛車に悪戯されるとアタフタ大慌てで母親に泣きつくところも、甘やかされて育った典型的な金持ちのボンボンという雰囲気がよく出ていて、梓が政信ではなく梨央に期待する説得力があって良かったと思います。