VIVANT

そもそも、バルカであんな目にあった乃木が、いくら同期とはいえ簡単に信用して事情を話し、更に案外簡単に会社への背信を引き受けるあたり、あまりに都合が良すぎた。そこは乃木が別班であるヒントのひとつになっていたし、山本をテント関係者だろうと疑う理由にもなっていた。蓋を開けてみたらクソ野郎だった。さて演じる迫田さんですが、視聴者をミスリードする役割は成功していたのではないでしょうか。頑固に口を開かなかったわりに、卑屈なまでに命乞いをするシーンは、実にクソ野郎らしい変わり身の早さで、演技としては見事だったと思います。

やっぱりただの仲良し同期じゃなかったか。逃走して黒須と合流するまでの間に表情も口調もどんどん荒っぽく鋭いものに変わっていって、「会社員の山本」の仮面が剥がれていく姿もさすがだったし、乃木と対峙した時の必死に命乞いする姿や乃木に唾を吐きかけて憎たらしげに笑う姿、乃木役の堺さんとの緊迫した演技合戦も見応えがありました。

途中で裏切ったりミスリード的な立ち位置の役が多い方なので、寝返ったりしたらどうしようとハラハラしたけど、普通に良い同期でホッとしました。「諜報員に間違われた」なんてとんでもない話題も「マジか」と真剣に聞いてくれるし、危険な頼みごとも「仕事以外の話が出来る同期はお前くらいだから」と引き受けてくれたり、限られた出番の中で、乃木との信頼関係や仲の良さを見ている側にしっかり印象付ける演技がとても良かったです。サーバールーム前での警備員とのやりとりも、目がちょっと泳いでたり防犯カメラに乃木が映ると目をまん丸に見開いたり、コロコロ変わる豊かな表情から山本の焦りや緊張が感じられて良かったと思います。