笑うマトリョーシカ

清家の父親らしいヌエのような人物ですね。清家にもっとも影響を与えたのは、母親のようでいて、実はこちらなのかなと思います。出番は少なかったですが、加藤さんの芝居は大物政治家らしい如才なさと同時に、真逆の迫力もありました。息子に自分に似ているとして、その生き方を伝えるシーンは息子に対する愛情なのか、はたまた自分のクローンのような存在にプログラムしているのかわからない雰囲気があり、シナリオの意図を理解した良い演技だったと思います。

母親を亡くした時の不安そうな表情や心許ない姿が、頼もしく力強い政治家の顔と別人のようで、中身がからっぽでずっと母親にコントロールされてきたという浩子の言葉に説得力がありました。浩子に縋る姿も子供みたいに頼りなくて、それが今度は浩子が和田島をコントロールするという二人の関係性を示唆しているように感じられたのも良かったです。

身振り手振りを交え、声を張ったり秘密を打ち明けるように顰めたり、サラリと冗談を口にして笑いを誘ったり、見ている人を惹き付けるトークスキルが印象的で、一色先生が演説のお手本に挙げる説得力があったのが良かったです。清家の応援演説で彼に握手を求められた時に、一瞬真顔になった後すぐに清家を抱き寄せる姿も、どう振舞えば聴衆の心を掴めるのか、政治的パフォーマンスをしっかり熟知している様子が感じ取れて良かったと思います。