あなたがしてくれなくても

陽一ほどの人たらしを見たことがない。それはみちに対してだけなのだけど、その沼にハマってしまったら出るのは容易ではないだろう。その沼は瑛太さんだから表現できる。セリフや台本に書かれていることじゃなくて玄関に入ってきた雰囲気からもう始まっている。人見知りのように視線をなかなか合わさない陽一がみちだけに発動する強引さがたまらなかった。

いやーとにかくうまい！みちがまだ席にも着いていないのにガツガツ、カンカン音を立てて食事する様子とか随所に自分勝手さが出ていてみちがため息つきたくなる気持ちも分かる。だけどみちが好きっていうのは紛れもなく本心で、甘ったれた中に純粋さがあってどうにも嫌いになれないんだよなー。

どうしてこうもサラッとダメな男を演じることができるのだろう。瑛太さんもほんとはこんな人なんじゃないかと思うほどリアルですごい。奥さんが作ったご飯を先に食べ始めて片しちゃうとかちょっとした仕草がイラっとする。そして本人に自覚と悪気はない。言ってくれればいいじゃんって人だよね。

手作りでパズルのピースを作っているシーンが良かったです。2人の時間が戻るように願掛けでもしているのかと思うほど真剣な眼差しで一心不乱に取り組む様子はけなげにも見えました。あやうく陽一のしたことを忘れてしまいそうでした（笑）

特に三島に対してはセリフだけ聞くとすごくゲスいのに仕草や顔を見るとなんだか許せてしまう。天性の人たらしがよく出ています。数分前まで妻を迎えにいくことしか頭になかったのに、コーヒーを倒されたらその予定を無しにして一緒に片付けてくれる。怒ってる様子もなく仕方ないなーと優しい声と仕草でやられたらちょっと期待しちゃう。悪いやつめ。

自分から三島を誘ったくせに終わった後の気まずい顔はないだろう。自分のしてしまったことをなかったことにでもしたいようにタバコを吸って落ち着かせているところが三島にしたらすごく傷ついただろうな。気がないって顔に書いてある、ずるいな。

いちいちやってることはみちを傷つけることばかりなのに、なんでか嫌いになれない魅力があるのが不思議です。クズをのらりくらりと見限らないギリギリをせめるのがうまい。だから嫌いになりきれず捨てられない。参ったよね笑

一言で言えばずるい（笑）しないならボディータッチとかやめればいいのに濡れた服を脱がしてくれるとかフードにじゃれつくとかいちいちみちが期待しちゃう仕草が多くてざわつく。しないのに色気がすごくて邪魔くさい。あんなん諦められんだろう。