下剋上球児

子どもたちを見守る目が温かくてどんな生徒も見逃さない、いてほしいなと思える教師でした。ベンチ内にいるとパーっと華やかになります。野太い声もよく響きグラウンドにいる生徒たちにもよく聞こえたでしょう。涙を拭いながら笑顔で叱咤激励する姿がとても良かったです。

明るい笑顔と弾むように楽し気な声、山住先生がベンチにいるだけで安心感があって選手たちのやる気がパワーアップするのが分かります。「将棋うっとれ」とか「音速でいけ～」など野太い声で飛ばす独特な野次も面白かった。選手たちの頑張りを涙をぬぐいながら見守る姿も、色々あった3年間と山住先生の献身っぷりが頭をよぎってグッとくるものがありました。勝利が決まった時の嬉し涙を浮かべた満面の笑顔もとても素敵でした。

甲子園から数年経った最後の現在のシーンで、山住先生自身も中堅となり、以前のフレッシュな感じとは違う落ち着いた感じを、何気ない表情だったり、声の出し方や会話の間だったりで表現しているのが上手いとおもいました。

自分の体もしんどいのに廊下で寄りかかりながらも試合を見る目は真剣で今すぐにでも球場に戻りたい気持ちが溢れていました。救急搬送されてきた生徒のあやふやな言動をいつものことだとすぐに切り捨てていたのが面白かったです。

病院のテレビで試合を見守っている時の祈るような表情や、居ても立っても居られない様子が、今すぐ駆け付けたい、近くで応援したいという子供たちへの愛情を感じさせました。選手たちが試合中にお尻のお守りを触る姿を見た時のフッと表情が綻ぶ姿も良かった。勝利が決まった瞬間の弾けるような笑顔も、顔を手で覆って嬉しさを噛みしめる姿も、一緒に頑張って来た山住の万感の思いが伝わってきてグッときました。

何となく黒木さんはあまりスポーツが得意そうではない、ちょっと鈍くさそうな雰囲気があります。でも逆にそれが野球は好きだけど、南雲のように指導が出来るわけではない山住というキャラにうまくマッチしていると思います。黒木さんは野球について詳しくなかったそうですが、しっかりと勉強しているのもわかります。芝居は言うまでもなくうまい。キャラも合っている。知識も勉強して補っている。となればダメなところがありません。さすが黒木さんだなと改めて思います。

痛みを堪えながら笑顔で「気にしたらあかんよ」と日沖を明るく気遣う姿が生徒思いで温かい山住らしくて良かった。翔に「感謝しとる」と告げるシーンも、翔を見つめる真っすぐな視線や真剣な表情で、慰めや気を遣っている感じが無く心からの言葉だってちゃんと伝わってきたし、日沖のこともそうだけど、日頃生徒たちのことをしっかり見ているからこそ、その時けるべき言葉がちゃんと分かっていて、生徒との関わり方に愛情と教育者としての責任を感じさせるところがとても良かったと思います。

ヤンチャな男子たちを率いるのは大変だ。絶え間なく子供たちに目を配り気を配り遅れているものがいないかみているのが分かる。よく通る声もカッコよくて統率者としての役割をよく考えていると思う。試合に負けて思わず泣き顔をキャップで隠したところがすごく良かった。

試合に負けてしまった時にキャップで顔を隠して泣く姿が印象的でした。精一杯頑張った選手たちに泣き顔は見せないという山住の誠意が感じられてほんの数秒のシーンだったけどグッときてしまいました。燃え尽き症候群になって熱を出してしまうところも、いかに熱意を注いで試合に臨んでいたのか、山住の野球部への情熱が感じられて良かったです。負けたことを悔やむ３年生たちに「あんたら、よう頑張ってた。スタメンにしたこと後悔してない」と語る時の誇らしげな笑顔もとても素敵でした。

第6話で相手の打球がレフト線に、「切れろ！！」とベンチから身を乗り出し叫ぶ。普段からあまり大きな声を出さないイメージのある黒木さんが大声で。その声のトーン、夢中になっている演技。思わず引き込まれました。

元生徒に卑劣な手口で貶められても毅然と私はそんなことしてないと言ったのが良かった。声高に言うんじゃなくてしっかりと前を見据えていた。きっとみんなついてきてくれるって感じがした。目の前にいる生徒との信頼関係ができているんだろうなと思った。

勝手に署名活動をしていた部員たちを立場上しっかりと注意するけど、言うべきことを言い終わるとすぐに「どんだけ集まったん？」と嬉しそうに部員たちの輪に加わるところが山住らしくて良かったです。生徒との距離が近いけど、それがとても自然で馴れ合いや媚びを感じさせないところが良いなと思います。選手たちが悔いなく戦えるように、不慣れながら自分に出来ることを精一杯こなす姿が胸を打つし、そんな山住だからこそ選手たちが噂に惑わされず、山住をディスった椎野を潰すと躍起になって試合に臨む展開に説得力があったのも良かったです。

犬塚を見舞うシーン、野球部の危機でやりとりの内容自体は真面目なものなんだけど、二人の会話のテンポの良さと間合いが絶妙で、ちょっとコミカルで楽しい、息抜きのようなワンシーンになっていたのが良かったです。言いたい放題の塩尻にドン引きしている表情や、生徒の頑張りや可能性を否定するような発言にあからさまにムカっとして言い返す姿など、素直に感情を表に出すところも山住の真っすぐさが感じられて良かったと思います。

生徒たちに舐められないようにしなきゃみたいな力みや気負いが一切なく、とても自然体で裏表のない飾らない態度や接し方が素敵で、南雲の「生徒たちは山住先生を信頼している」という言葉に説得力がありました。犬塚に「いつも人の都合を気にしない」「土足で踏み込みますよね」とズバっと言い放つシーンもスカッとしました。南雲に対する態度や表情も、憤りはあるけど彼が素晴らしい教師で野球部にも絶対に必要だって分かっていて、でもどうすることも出来ないっていう複雑で一言で表せない色んな感情が伝わってきてとても良かったです。

あんなヤンチャな子供たちを指導するには厳しい顔もしなきゃやってられない。よく通る声がいつもよりキリッとした厳しめの声で先生らしいなと思いました。ざわつく子供たちに前を向かせたり黙らせたり世話を焼く様子が微笑ましかったです。

「私も共犯になります」と南雲を副部長に指名する時のキリっとした表情が素敵でした。山住の覚悟の強さと野球部に南雲が絶対に必要だという確信が感じられて格好良かったです。部員たちに指示を出す時の遠慮のない物言いや「いちいちウェイとか言わない」などの何気ない会話など、方言混じりの台詞がとても自然で上手いのもさすがだなと思います。

部員たちとの何気ないやりとりがすごく自然で良いですね。楡との「グミはご飯じゃない」っていうやりとりや久我原に野球部を勧めるくだりなど、台詞っぽくなくて日常会話みたいなリアリティが感じられます。初のフィジカルテストに張り切ったり、めげずに部員集めをしたり、野球部のために一生懸命奔走する姿も素敵。滑舌が良くて声も通るので、試合中の小声の早口台詞が流れずにしっかり耳に残るところも良かったです。

南雲に顧問をお願いする時の熱心な姿や、賀門と対面した時のキラキラした眼差しや感動して口元を押さえている仕草、試合中の真剣な表情や気合の入った声かけなど、全身から野球への愛が溢れ出ているところが良かったです。表情も生き生きしていてチャーミングだし、南雲や生徒の勧誘にグイグイいくけど、うるさ過ぎたり鬱陶し過ぎない絶妙な塩梅もさすが上手いなと感じました。

熱量があっていいですね。まだ乗り気じゃない南雲先生をリードするようなところがあって、そして押し付けがましくないギリギリのラインを攻めてくるので見ていて嫌な気持ちになりません。自分が男ならと悩んだ過去も恨みがましくならなくてよかったです。