最愛

どうしても真田側を正義と見たいから渡辺親子がゲスであるほど盛り上がるのだろう。それに違わず極まりないゲスっぷりに殺されて当然と思ってしまっただろう。それを一手に引き受けた最期はほんとに見事な悪役っぷりでした。

最後まで翻弄してくれて、それなのにオチは息子と同じクソ野郎だった。息子の悪事は被害者が悪いのに、息子が殺されたのは殺したやつが悪いなんて平気で言えるあの最低さをうまく演じたのがすごいです。この方の顔はきっとずっと忘れない。渡辺という名とともに深く記憶に刻み込まれるような演技でした。

「ちょっとイタズラしただけ、誘ってきた女が悪い」「何で康介が責められなきゃならん」と加瀬に告げる姿が吐き気がするほど憎々しいクズっぷりでした。どんな理由があっても殺人は絶対許されないことだけど、それでも加瀬の行動に共感出来るような、橘しおりの「殺されても仕方ない」という言葉を体現するような演技はさすがでした。同情の余地があると加瀬がただ感情的になった愚か者に見えてしまうけど、親子揃ってここまで最低最悪ならね…という説得力があったのが良かったと思います。

首絞められて川に落ちて、それでも這い上がってきて息子の名前を絶叫するってものすごい執念。ほんのちょっとのシーンだったけどめちゃくちゃインパクトがありました。公園で梨央を問い詰めるシーンも、異常なほどのしつこさや縋るようなジトっとした目が怖すぎて、梨央や会社を守りたい人間にとっては殺したくなるほど忌々しい存在だったろうなという説得力がありました。

好評ですが、リコカツの瑛太さんの自衛隊父がちらついて、笑止千万言うんじゃないかって連想してしまう。
宮崎美子さんに愛想つかされる、頑固な旦那さんっていうのが。
迫真の演技されているんですけどね。
もう少し期間置かれたら、息子を亡くしたお父さんって見られたのですが。

渡辺は悪の根源でこの苦しみの主なのにそれでも人の子なんだとこのお父さんを見て思い返します。長い間息子を求めすぎて死んだことさえ分からなくなるほどの精神状態になっている。大学の校門で打ちひしがれている姿が痛々しかった。

長嶋に話を聞きにくるシーン、興奮した大きな声や捲くし立てるような早口気味の台詞、見開いた目、全身から息子を絶対に見つけてやらねばという必死さが伝わってきて、その尋常でない様子が怖いくらいでとても印象に残りました。行方不明になってからもう15年経っているのにその熱量が昔と全く変わっていないところも息子への深い愛情と執念を感じさせました。

素晴らしい演技。息子の情報を求めて必死に探す父親の演技は鬼気迫るものがあり心に残った。
この人の演技をみたいと思う俳優。

かなりの年月が経っても息子の行方だけを気にして、まだ生きてるまだ生きてると呪文のように唱えているような必死さに親の愛情もここまでいくのかと思わされる。他人の迷惑なんて考えない勝手さに狂気性もあって、康介が息子というのが納得できる演技も凄いなと思いました。

事件の根源である渡辺を知っているから全然感情移入できないけど、それでも人の子なんだなとこの人を見ると思い出す。自分の子がいなくなれば気が狂いそうになるよね。ここにも最愛の意味が含まれているような必死さに揺さぶられます。

ギョロっとした目や早口で捲くし立てるように莉央を問い詰める姿、汗を拭きながら山中を捜索する必死で余裕のない様子が息子への愛情に溢れていて、見ていて苦しくなるくらい切なかったです。堅物だったり気が狂っていたり、ヤクザだったり、癖のある役しか見たことがなかったけど、こういうストレートに親の愛を滲ませる父親も似合うんですね～。わりと役柄が限定されそうなインパクトのある風貌だけど、色んな色に染まれるすごい役者さんだなと思いました。