さよならマエストロ〜父と私のアパッシオナート〜

久間田さんはもともとモデルさんなのですね。芝居を見たのはこれが初めてですが、モデルさんだからなのか撮られることに慣れている感じはします。だから瞬間での笑顔とか表情を作るのはうまいけど、その前後の感情変化を見せるところがまだいまひとつです。なので引き気味の雰囲気なのに、当初はインテンポに走りがちな演奏する性格とミスマッチが起こる。その二律背反したところは、彼女の表層と深層とで噛み合っていないところだから、うまく生かせるとよかったかな。でもまだこれからの方だし、可愛かったのでおまけです。

「羽野さんが晴見フィルの未来を考えてくれてるなんて…」と感動している姿が可愛かったです。うっとりと胸を押さえて椅子ごと後ろに倒れそうになってるオタク全開な姿も内村らしくて良かった。メイクなのか照明の加減なのか、羽野のことになると目がキラキラして見えたり頬が紅潮して見えるところもチャーミングで良いですね。天音の指揮に合わせて堂々と胸を張って楽しそうに演奏する姿も、1話のオドオド具合と比べものにならないくらい頼もしくて格好良かったです。

天音の家出に皆がオロオロしたり「誘拐で訴えられるかも」と心配したりと深刻になっている時に、一人「ロミオとジュリエットみたいですね」と呑気に構えているところが、何処かホワっとしていてのんびり屋さんの内村らしくて良かったです。夏目の講演を生徒みたいなキラキラした目で聴いている姿も、満面の笑みで拍手を送る姿も印象的で、夏目を慕い尊敬する気持ちが伝わってきて良かったと思います。

羽野が「はるピー」と口にしただけで「可愛い～」とこっそり悶えてるブレないオタクっぷりが面白かったです。羽野を見つめる眼差しが本当にキラキラ輝いていて、他の団員と話す時とは醸し出す空気が全然違って見えるのも上手い。コンサートでのモーツァルトの扮装もよく似合っていて可愛かったです。

演奏中に「推しと目が合った！」とときめいている姿がオタク全開で可愛らしい。憧れの羽野にミスを指摘されて落ち込むところも、「次は何を言われるんだろう」って萎縮して怯えている姿も、自分に自信がなくて控えめな内村の性格を感じさせて良かったです。以前見た役が恋愛に積極的な女の子だったので、こういうちょっとオドオドしたキャラもハマるんだなと役柄の幅の広さに驚いています。

羽野が練習場に入ってきた時の興奮っぷりが可愛かったです。顔を両手で覆ったり、感動し過ぎて声も出ない姿が推しを前にしたオタクそのもので内村のガチっぷりが伝わってきたし、一緒に演奏している時の喜びを噛みしめているような表情やチェロの音色をうっとり聴く姿も、見ているこちらまで嬉しくなるような幸せオーラに溢れていて良かった。羽野の何処が好きかとか、具体的に語る台詞は全くなかったけど、表情や仕草で推しへの愛がしっかり伝わってくる演技がとても良かったと思います。

高校時代のエピソードがすごくてそんなトラウマがあったら2度と舞台に立てないだろうなと思うけど、運命の解釈を自分なりに昇華させたりトラウマと向き合い好きな音楽に向き合いひたむきに頑張っているんだなと伝わりました。派手ではなくふっと小さく笑うところが儚げでいいですね。

いつも俯きがちで控えめな姿が、自信の無さや過去のトラウマを滲ませていて、その繊細な表情が印象に残りました。夏目と「運命」について話すシーンも、辛い過去を「面白い」と評されたのに怒ったり戸惑ったりせず、夢中になって曲の解釈を語る姿が、音楽が大好きな根っからの音楽家なんだなと感じさせて良かったと思います。