さよならマエストロ〜父と私のアパッシオナート〜

嫌味を言われること覚悟で過去に色々あったプロデューサーにスポンサーになって欲しいと頼みに行ったり、フェスで優勝することを本気で目指していたり、晴見フィルの未来のために奔走する姿が格好良かったです。「無くすには惜しいオケなんです」とプロデューサーに深々と頭を下げる姿も、晴見フィルを大切に思う熱い気持ちが伝わってきてグッときたし、仲間の前では「もうちょっと皆と演奏したいって思っただけ」と仏頂面で照れ臭そうにしてるシャイなところも羽野らしくて良かったです。

9話のコンサートシーン、真剣な表情なんだけど穏やかで心地よさそうな良い顔をしていて、それが最初の頃のダメ出ししまくりで尖っていた時と別人のようで印象に残りました。その表情の変化だけで夏目のことはもちろん、オケのメンバーのことも彼らが奏でる音も深く信頼しているのが伝わってきて、一緒に過ごすうちに変わっていった羽野の音楽への思いや内面の成長が感じられて良かったと思います。

クールで馴れ合いとか苦手そうなのに、夏目の実家でおもてなし料理を見てテンション上がってたり、しっかり寛いで楽しんでいる姿が意外で、羽野にとって晴見オケが居心地の良い場所になってきてるんだなと感じられたのが良かったです。天音の家出騒動の時に、動揺してオロオロする古谷や「ロミオとジュリエットみたい」と呑気にしてる内村と違い「誘拐で訴えられるかも」という発想に至るところも、冷静で現実的な羽野らしさが出ていて良かったです。

練習に励む二朗の演奏を「それじゃ何の曲か分からない」とバッサリ斬り捨てたり、「恋に落ちちゃった」という瑠李の話を「へえ～」と全く興味なさそうに流したり、相変わらずの遠慮のない塩対応が羽野らしかったです。当初は3か月だけという話だったけど、コンペの参加を提案したり、その賞金を活動資金にあてようと考えたり、晴見フィルのこの先の未来をしっかり見据えている姿も垣間見れて、オケへの愛着や「このメンバーでもっと演奏したい」という欲が感じられたのも良かったと思います。

団員の中で一番の新参者なのに、コンマスの近藤を「しぶとくてネチっこい」と辛辣に評するところが正直で遠慮のない羽野らしくて笑ってしまいました。皆がノリノリな中、バッハの扮装に一人照れて仏頂面しているのもクールな羽野らしくて良かったし、嫌がりつつ、一応ちゃんと着てくれるところも羽野の真面目さや意外と協調性のある性格が感じられて良かったです。

皆が空気を読んで気遣う中、古谷に「最後のミス、どうしたんですか」と直球で尋ねる姿が、完璧主義でストレートな性格の羽野らしかったです。以前のような責めるようなキツい口調ではないのも、羽野の内面の成長を感じさせて良かった。5年前の響の演奏について語る時のしみじみと感動を噛みしめるような表情や口調も、彼女のヴァイオリンがいかに素晴らしかったのか伝わってきて良かったし、「音楽を続けるのも辞めるのもどっちも地獄かも」と響の気持ちに共感している様子も、一度音楽を捨てた羽野だからこその説得力があって良かったと思います。

コンサート本番中に夏目にじっと見つめられるシーン、動揺したり「間違えた？」と焦る他のメンバーとは違い「何ですか！」って思いっきり睨み返して、自分がミスしたなんて考えが一ミリもない強気なところが羽野らしくて笑ってしまいました。前回犬猿の仲だった大輝と隣同士でスコアを見ていたり、二人で会話するシーンも増えていて、ちゃんと仲直りして何だかんだ一緒にいるところも微笑ましかったです。

淡々とした口調で次々とダメ出しをする姿、演奏中ずっと我慢していた不満や違和感、気持ち悪さが一気に噴き出た感じで、抑えめのトーンなのに迫力があって、大声で怒鳴られるよりもダメージ強いなって感じました。大輝との仲直りのセッションも、時折チラっと大輝に視線を送る姿が彼の音に意識を向けて合わせてあげているのが伝わってきたし、演奏後の清々しそうな表情や大輝との笑顔のアイコンタクトも、羽野の意識の変化が感じ取れて良かったです。

ワイルドな見た目と美しく情熱的な演奏シーンのギャップが良いですね。夏目とバッハを演奏している時の徐々に笑顔が増していって音楽が楽しくて仕方なくなっている姿や、自分の見た目とか才能とか関係なく、奏でる音色そのものを認めて貰えた時のグッときているような表情もとても素敵で、夏目と一緒に演奏がしたいと再びクラシック界に戻って来る決意をする説得力があったのも良かったと思います。