やんごとなき一族

ウエディングドレス姿で登場するなど所謂奇行に走るシーンは、棒読み台詞も作り笑顔も心が壊れた人って感じとマッチしていて良かったけど、佐都のお見舞いに行くシーンや、ビルの屋上での健太とのやりとりなど、演技力のある人としっかり芝居で対峙するシーンになるとちょっと見てられない。泉の演技が拙過ぎて土屋さんたちの熱演が空回りして見えるし、シリアスさや緊迫感も台無し。こんな豹変する難しい役ならもっと演技力のある他の女優さんの方が良かったのでは？と思います。

美しくそこにいてスッと気の利くサポートをする、みたいな役が適役だと思う。エキセントリックな役は振り切ればいいと思っているかもしれないけど実はさじ加減がとても難しいと思う。あれじゃただの変わった人、健太の心は振り向かない。

演技が下手な人という印象があったけど、こういうクレイジーでエキセントリックな役は意外とハマるんですね。いつもは気になる棒読み台詞も泉の話の通じないサイコパスっぽさに合っていたし、お人形さんのような美貌と異常行動のギャップも泉の怖さを際立たせていて良かったと思います。

健太が以前好きだった女性として登場した割には、存在感がイマイチ。深山家の内輪もめが多すぎて、秘書の泉の存在意義があまりないように感じている。秘書として健太の仕事をサポートしてはいるが、健太と佐都の絆は深まる一方で泉の入る余地なしだと感じた。

佐都に電話する健太を見つめる表情、感情が読めない真顔が怖かったです。ただの優秀な秘書、性格の良さそうなお嬢様ではなさそうな雰囲気が漂っていて、佐都と健太の仲をかき乱しそうな不穏さが感じられたのが良かったです。いつか豹変しそうな気がして泉が健太の傍にいるだけでソワソワします。

おっとりした話し方や柔らかい表情から家柄のよさそうなお嬢さんって感じがしていい。肩を出した大胆なドレスは秘書としてはどうかと思ったけど、奥さんを前に同じドレスだと気づいた時の青ざめ方がリアルで良かった。

演技は上手くないけど、美人でスタイルが良くてヒロインが思わず気遅れしてしまう説得力があるのが良かったです。こんな綺麗な片思いの相手が駆け落ち同然でパリに行ってしまったら気持ちを引きずるだろうし、健太が相当落ち込んだっていうのも分かる。パーティーでのドレス被りの件も、立場を弁えた謙虚な態度が清々しくて、泉の賢さや育ちの良さを感じさせて良かったと思います。