警部補ダイマジン

存在感はそれなりにありましたが同じような役柄で同じような演技、幅はないですね。結局のところ向井理さんにしか見えません

自分を掌で転がしてるつもりでいる百鬼よりさらに上手で、余裕で反撃する姿が格好良かったです。頭のキレる賢い人という説得力があるから、こういう展開にも無理がないし、何度もお見通しで自信たっぷりな表情や口調も様になっていて良かったです。よく通る良い声だから「反撃を開始します」や百鬼に手錠をかける時の「さ、始めましょうか」などの場面転換のきっかけになる台詞がばっちりキマるところもさすがだなと思いました。

病院を抜け出して牡丹の前に現れるシーン、表情も口調も穏やかで普段通りに見えるけど、どこか氷のような冷たい空気と絶対に逆らえなさそうな圧が漂っていて、牡丹が怯えて凍り付いてしまう説得力がありました。牡丹を拘束して問い詰める姿も、業務連絡をしているような淡々とした口調が怒鳴って威嚇されるよりも何倍も恐ろしくてインパクトがありました。牡丹に「裏切ったのはあなたです」と言われた時の何とも言えない意味深な表情も印象に残りました。

天羽の別宅が更地になっていたことや教官の正体など、報告を受けるまでもなく真っ先に気付いているキレ者っぷりが平安らしい。「まだ分からないんですか？」なんて余裕ぶった嫌味な台詞もめっちゃ様になるし、落ち着いた大人だし賢い雰囲気がちゃんと出ているからか、台場を小馬鹿にするような態度や口調が小者っぽく見えないところも良いなと思います。

何が起きても動じず、他人事みたいに淡々としていて冷徹な感じだけど、母親に語りかける時だけは穏やかで優しい口調に変わり、その姿に血の通う人間らしさが感じられるところが良かったです。百鬼との食事シーンでの所作や、ベンチに座る時のロングコートの捌き方、足の組み方など、何気ない立ち居振る舞いがスマートでサラリと決まるところも隙の無い平安のキャラクターに合っていて良いと思います。

切れ者っぽさや酷薄さが顔をのぞかせるところなど、雰囲気はそれっぽい。でもこのところ向井さんって、クールで切れ者っぽい役が多いせいか、ちょっと見飽きた芝居だなという感じもする。動のシーンが少ないので、芝居が表情に偏ってしまっている。おそらく台場が動で、平安が静、というコントラストを作りたかったんだろうけど、平安はもう少し酷薄さを強くするとか、実はバイオレンスな一面を持つとか、ちょっとだけ個性の上乗せがあれば、キャラとしてはもっと面白かったように思える。もっともそれは脚本家や演出家の問題だけど、個人的にはちょっと納得できない芝居です。

低く落ち着いた声音やどこか人を食ったような余裕を感じさせる態度、知性を感じさせる流れるような台詞まわしが平安のキレ者っぷりに説得力を感じさせます。こういう役、ホント似合う。色んな方面から疑われている台場を「大人気ですね～」と面白がる姿や、台場が「ご主人様」と口にするまで手を貸さないドSっぷりなど、ただの生真面目でお堅いキャラではないところも良い。父親の件でみせる苦悩した表情や陰のある雰囲気も、台場とのシーンで見せるコミカルな姿とギャップがあって良かったです。

何でもない日常会話みたいなテンションで「抹殺してください」と台場に指示したり、波多野を脅す時の余裕たっぷりで楽しげな姿、撃たれた牡丹のことも全然心配してなさそうだったし、彼なりの正義はあるんだろうけど人として何か欠落しているような感じが表情や態度から伝わってきて、彼が抱えるものの重さや壮絶な過去がより際立つところが良いですね。自分に寄り添おうとする台場を「殺人者に同情されるほど落ちぶれていない」とバッサリ斬り捨てるところも、二人の絶対的な主従関係が感じられて良かったと思います。

人を殺したことがある台場と対峙する時、下手したら殺されておしまいってことにもなり得るのに一歩も引かずむしろ近づいていくところが良かった。自信がなきゃできない仕草。襲われても勝てる自信があるからだよね。スマートな語り口と隙を見せないところがかっこよかったです。

撫でつけた髪と黒いロングコートがよく似合っていて、登場しただけで平安の有能さを感じさせるところがさすが。理路整然とした語り口と落ち着いた声も知性を感じさせて良かったです。44の一味に襲われそうになった時も、下手に出つつ相手の表情や様子をしっかり観察する隙の無さを見せ、その冷静さや肝の据わりっぷりも、平安のただモノではない感じを際立たせていて良かったと思います。