グレイトギフト

藤巻に罪に問われなかったことを訊かれた時の「色んな方が助けて下さって」という含みのある微笑みが良かった。色んな人間と繋がりがあって賢くて、一連の事件に関わった人物の中で実は杏梨が一番最強なんじゃないかなって思える余裕と貫禄を感じさせました。何事にも動じない逞しさと優雅な美しさを併せ持つ妖しくて魅力的な女性を見事に演じていて、ドラマの良いスパイスになっていたと思います。

ギフト売却の中心人物ともいえるのに、お説教程度で開放されるって、一体、どんな裏人脈を築いているのかと思わせる悪女です。こういう女性にのめり込んだら、間違いなく蜘蛛の巣にかかった羽虫になるしかない感じがします。演じる倉科さんですが、こういう妖艶さやしたたかさ、そして神秘的な雰囲気も、文句なく表現しているたと思います。個人的にファンなので、評価は甘めにしがちなのですが、甘くしなくても完璧な芝居だったと思います。

強く頼もしくなった藤巻を目の当たりにした時の、初めて会った人を見るような眼差しが印象的で、それくらい普段の藤巻とは別人のような変貌ぶりで、男性の目利きに長けた杏梨にもかなり衝撃的に映ったんだろうなと伝わってきたのが良かったです。白鳥が劣勢になるにつれ、口調や微笑みがあからさまによそよそしく冷たくなっていくところも「強い男の人が好き」と公言する杏梨らしくて良かったです。

優雅に微笑みながら死体にさえ驚かないのは恐れ入りました。どれだけいろんな修羅場をぐくり抜けてきたのだろうかと想像してしまいます。自分の美貌を全面に出して武器にする強い女性。立ち振る舞いや目線の流し方などとても美しいです。

開き直って白鳥に金を要求する藤巻を笑みを浮かべて面白そうに見つめる表情が印象的でした。藤巻の女性の趣味を小馬鹿にした郡司を窘めるシーンもあったし、冴えない男認識だった藤巻の変化に興味を持ち始める様子が表情だけで伝わってきたのが良かったです。ピリっとした緊張感が漂う取引の場で、一人にこやかに微笑んで優雅さを保っているところも、只者じゃないオーラがあって良かったと思います。

自分の店で二人も殺されているのに「私はお酒を出しただけ」とほほ笑む姿や、「お客様が困っていたら全力でお力添えします」と平然と遺体の始末に手を貸す姿、ただのクラブのオーナーではないなと思わせる肝の据わりっぷりとこういった状況に手慣れている雰囲気を醸し出していたのが良かったです。優雅で美しいから、余計にその裏の顔の怖さが際立つ。シーっと人差し指を口元にあてる仕草や、本坊の耳元で本命を囁く姿など、何気ない所作に色気と艶やかさがあるところも素敵です。

本坊にお願いをする時の「ダメですか？」っていう上目遣い、少し距離を詰めて「いつも頼りにしてます」と微笑む姿、本坊の気持ちにちゃんと気付いていて扱い方を心得ている感じが出ていて良かった。露出のない衣装でもほんのりと品の良い艶っぽさがあるところや、杏梨の賢さとしたたかさをあざと過ぎずチャーミングに演じているところも素敵です。

美しいだけじゃなく簡単には近づけないオーラを出しているのはさすが。あれでは雑魚は近づけない。物おじしている人には心を見透かすようなことをずばっといって相手にもしない。だけどチラッと隙を見せるからまた近づきたくなる。すごいなと思う。

「近しい人を続けて亡くされて～」と牽制してくる白鳥を余裕の笑顔で交わす姿が格好良い。政財界の大物たちを手玉に取ってきた杏梨の接客スキルや知性、肝の据わりっぷりが感じられました。「デリカシーがない」「本当にモテないでしょ」などわりとズバっときつめのコメントをするけど、声の甘さや棘のない口調のおかげで全くイヤな感じがしないところも良かった。警戒しまくる藤巻に「毒は入っていないので安心して」とそっと耳打ちするシーンもドキッとするような艶があって良かったです。

愛らしさと艶やかさがあり、権威ある男性たちを手玉に取る説得力があります。愛宕のご遺体と対面した時の労わり慈しむような表情も印象的で、「愛していた」とは口にしなかったけど、杏梨なりの情が確かにあったんだろうなと感じられたのも良かった。「力のある男が好き」とはっきり口にして権力志向が強いけど、ガツガツした下品さがなく、しなやかでどこか気品を感じさせるところも良かったと思います。