ひだまりが聴こえる

「何かを選ぶ時に寂しいを理由にするのは止めろ」「足元を照らしてくれる明るい道を行け」と太一に助言するシーンがとても良かったです。ながらではなく、しっかり太一の顔が見える場所に移動して話す姿や、ぶっきらぼうだけど深みと温かみを感じさせる口調が、これだけはちゃんと伝えたいっていう源治さんの強い思いを感じさせました。放任主義に見えるけど、根底に太一への信頼がちゃんとあって「こいつなら大丈夫」っていう保護者としての自信や誇らしさが感じられるのも良かったと思います。

９話の太一との爪切りのくだりとか、ストーリーにはそんなに深く関わりのないやりとりなんだけど、ほのぼのとした温かさが心地良くて、太一と源治さんのシーンがあるとすごくホッとして癒される。太一に「クソジジイ」って言われても怒らず楽しそうにヘラヘラ笑ってる姿も、源治さんの大らかさや太一への愛情を感じさせて良かったし、この何でもドンと受け止める度量の大きさが太一に通じるものがあって、やっぱり家族だなあ、このお爺ちゃんに育てられたんだなあって改めて実感出来たのも良かったです。

航平が作った料理を「うめえ～」と幸せそうに食べる姿が太一そっくりなところや、食べ物の取り合いで太一と喧嘩する子供みたいな姿が微笑ましくて良かったです。太一の子供時代のマネをする時の楽しそうで愛しそうな笑顔も素敵。佇まいにも台詞にも体温を感じるというか、実際に源治さんが存在してるようなリアリティが感じられるのもさすがだなと思います。

ポチ袋で太一の頭を叩いてお年玉を渡す姿がすごく源治っぽくて良かった。ハンバーグを作った時もそうだったけど、相手に何かをしてあげる時の照れ隠しなのかいつも以上にちょっとぶっきらぼうになる感じが良いですね。嬉しそうな太一を見てニコニコしてるのも、「旨いもんでも食え」って声が弾んでいるのも、太一への深い愛情が伝わってきてほっこりと温かい気持ちになりました。

「美味しいや」「うめえな」と呟きながら朝ご飯を食べるシーンが印象的でした。ちょっとした視線の動きや独り言の間だけで、ちゃんと太一の異変に気付いていて気にしてるけど、敢えて口に出さないっていう空気が感じ取れて、ただ黙々とご飯を食べているだけなのに孫を気遣う愛情がしっかり伝わってきたのがとても良かったです。

手作りハンバーグを食べる太一に「旨いだろ」と得意げに話しかける姿、太一が泣いていることに気付いてサッと変わる表情、何も言葉をかけずそっとしておくけど、太一の様子が気になり過ぎて新聞を上下逆に持ってしまう姿、不器用で口下手だけど太一を思う深い愛情が目一杯伝わってくるその表情と醸し出す温かい空気にグッときてしまいました。太一の痛みも孤独も、全て受け止めるドンと頼もしい包容力が感じられて、思春期の繊細な時期に両親との辛い出来事を経験しても、太一が捻くれたりせず真っすぐで優しい子に育った説得力があったのも良かったです。

太一と晩御飯を食べるシーン、ほのぼのとした素朴な空気感が心地よくて良かったな。「薄いな」ってボソっと呟くのも、醤油取って来いのくだりでムキになって孫と言い合いする姿もチャーミングだし、あの短いやりとりだけで遠慮なく何でも言い合える太一との関係性や親代わりとしての深い愛情が伝わってきたのもさすがだと思います。