合理的にあり得ない 探偵・上水流涼子の解明

最後まで存在感の薄い人だったなあ。大柄な涼子や丹波と一緒だと目を引かないし、声がよく通るキャストが多い中で独特な抑え気味の声が聞き取りにくくて印象に残らないし、変装すれば地味で周りに埋もれてしまうし、実際の探偵業ならそれくらい地味な方が正解なんだろうけど、ドラマなのでもう少し「この人でなければ」という存在感を示して欲しかったです。

序盤は役柄がうまく馴染んでいなかったのか、ＩＱ140には感じられなかったし、笑いの間も悪くて、正直パッとしないなという印象でしたが、中盤くらいから天海さんとの息が合うようになってきて、掛け合いの面白さなどコンビ感が良くなったと思います。もちろんドラマ中のエピソードとして彼と父親の問題が、涼子の協力もあって解決したことに伴い、距離感を縮めるという演出意図もあったのでしょう。序盤だけで見るのをやめていたらバツでしたが、全体としてはマルという感じです。

昔から人と関わるのが下手だったってお父さんの枕元で言っていたけど、それからもうちょっとクセを出さないと成立しないように思いました。何でもできてしまう器用さが際立ち涼子さんたちとの掛け合いもスムーズじゃ、その設定は無理がありますね。

前回の英語も今回の青森弁も、めちゃくちゃナチュラルで上手いところは何でもこなす天才らしさがあって良かったけど、変装シーンになると地味で個性が埋没しちゃうのが勿体ない。ガチの変装ならそれで正解だろうけど、ドラマの設定だし「貴山が変装してる」ってある程度観てる側に伝わるほうが面白いと思う。警備員に変装した時も、天海さんはすぐ分かったけど松下さんは全然気付けなかったです。

ゲストの水野美紀さんのインパクトが強すぎて、主演なのに印象が薄かったのがイマイチ。秘書役として控えていることが多かった影響もあると思うけど、ターゲットをだますために潜入してるんだし、もう少し存在感を出しても良かった気がします。面接中に涼子とやりとりするシーンや金庫を開けるシーンなど、小声で話すことが多くて台詞が聞き取りにくかったのも残念でした。

潜入捜査でサラリーマンならどんな人にでもなれるし馴染むことができるのに、詐欺師に近づいた物理学者の時と中国系の社員だった時は髪型が変わっただけであんまり変わってなかった。あれじゃ1人くらいこの前の人じゃないか？と気づく人が出そう。使い分けはできないんだね。

見た目が地味というか、清掃員やプリンターの交換など、どんな扮装をしても馴染んでしまってすぐに貴山だと気付けないのがちょっと残念。潜入捜査が見どころでもあるから、天海さんのようにどんな変装をしても涼子だってすぐ分かるくらいの方が面白いのになって思います。息が漏れるような独特な台詞まわしで、小声だとたまに何話してるか聞き取りにくいことがあるのもイマイチです。

娘より会社の利益優先な諫間に心底呆れたような顔をしたり、父親の愚痴を言う久実に「それはちょっと言い過ぎ」と諭したり、涼子と違って一般常識的な倫理観や良心がちゃんと備わっているのが伝わってくるところが良かったです。久実に近づくシーンで彼女に気付かれないように顔を背けたり、座る位置をずらしてちょっと距離を取ったり、仕草だけで貴山の女性苦手キャラをしっかり表現する丁寧な演技もとても良かったと思います。

いくらイケメンでもあのたどたどしさでは女性は落とせないだろうとハラハラする。潜入先では冷静だけどそそっかしく、そこが臨場感が出てドキドキさせるのがうまいなと思う。ちょっと猫カフェへって言っても違和感ないところが好きです。

天海さんとのコンビっぷりが良かったです。会話のテンポもポンポンリズムが良くて小気味良いし、言いたいことははっきり口にするけど基本冷静で抑え目な貴山のキャラが、押し出しの強い涼子とバランスが良い。神崎の秘書と対面する時に微妙に視線が合ってなかったり、涼子の指示をぎこちなくこなしていく姿も、女性が苦手な貴山らしさが出ていて良かったと思います。