いちばんすきな花

松下さんは微妙で繊細な表現が本当にうまい。椿というキャラは一見すると弱々しく見えますが、実は強い。あの状況で純恋の言い分を呑み込み、美鳥のために家を売る決断できるのだから。普通の他人なら単純に純恋を怒鳴る。あるいは嫌がらせのひとつもするかもしれない。それをしないのは弱いからではなく強いから。離れていく者を引き留めようとするのも、問い詰めるのも、ただのエゴ。なぜなら結果はわかっているのだから。松下さんの演技には怒りや哀しみを握り潰してしまう男の優しさがある。オレ様系が流行っている時代には理解されにくいかもしれないけど。

とても好きな俳優さん。表面的には好青年だけど中身は屈託だらけなんだろうなと思わせる存在感が、今回の役どころとリンクしててなかなか良かったんじゃないの。

料理してるよよちゃんになんか手伝うことある？とかじゃなくて何か仕事くださいって言った椿さん、相手に負担をかけない言葉選びが上手だなと思いました。よよちゃんの告白を断る時もいつもの会話の延長のようなテンションだったのは深刻にしない心遣いだったと思った。

松下さんのいい人キャラは正直飽きたかなと思います。いい人とか繊細な人ってだけでいいのに、そういうキャラだとどうしても女性っぽくなっちゃって好きではありません。優しいって表現がそれなら、もう少し違うパターンも見てみたいと思います。

すみれとの最後の話し合いを見て思いましたが、椿って優しいんだけど冷たいんですよね。来るものは拒まず恋人になれば優しく包み込んでくれるけど、肝心なところに愛情を感じない。だからこそあんなにズバズバと正直な気持ちが言える。そういう心の境界線みたいなものを上手に演じているなと思います。

つまらない男と評されていましたが、めんどくさい男に映りました。清潔感あるし人当たりもいいけどなんか難ありの感じがして、それが今に繋がっているんだろうなと思えたので突然の婚約破棄も相手のせいだけとは思えませんでした。