ラストマン ―全盲の捜査官―

皆実に手柄をさらわれっぱなしだけど、捜査の仕方は地道だし、冤罪を生みかねない強引な捜査よりもずっと好感を抱くし、だからこそ有能なんだと思わせてくれます。馬目じゃないけど、こういう上司なら盛りたてたくなりますね。吉田さんの演技には刑事らしい厳しさや凛々しさはもちろん、心太朗を気遣う優しさも感じられるし、仕事も出来る感じが伝わってきます。またスーツの着こなしもいい。女優さんってこういうきっちりしたものを着る経験が少ないせいか、案外こういうパンツスタイルのスーツをちゃんと着こなせてない人が多いのだけど、吉田さんはばっちり着こなしていて格好いいです。そこもプラス要素ですね。

「私の好きな護道心太朗はそんな人じゃない」と皆実の見送りに行くよう心太朗の背中を押してあげるシーンが良かった。心太朗の頬をつまむ姿が告白めいた言葉の照れ隠しみたいで可愛らしく、二人の心の距離の近さを感じさせたのも良かったです。正義感が強くて頼もしくて、特に役柄の説明がなくても皆に慕われて尊敬される説得力が感じられるところもさすがだったし、心太朗とのやりとりで見せる人間味溢れる姿も親近感がわいて素敵でした。

刑事部長に池上の件は事故で処理しろと言われた時のあからさまに納得していない表情や、キャリアを盾にされた時の「そこまでして上に立とうとは思わない」ときっぱり言い切る姿が佐久良の正義感の強さや真っすぐさを感じさせてとても良かったです。１話から「真実をとことん追求する」という姿勢がずっとブレず、言動や行動に迷いがないところが格好良い。こういう人だから佐久良班の面々に慕われて尊敬されるんだなという説得力が感じられるのも良かったと思います。

心太朗がバスジャック犯と対峙するシーン、心太朗が撃たれても駆け寄らずにすべてを彼に委ねる姿が二人の信頼関係の深さを感じさせました。犯人とのやりとりを見守っている時の「心太朗なら大丈夫」と確信しているようなキリっと引き締まった表情も良かった。二人きりで会話している時の「あんた」呼びや、気を抜くと自然と「心太朗」と呼び捨てになってしまうところも元恋人同士らしい距離の近さが感じられて良かったです。

亜里紗を全速力で追いかける姿も、拳銃を突き付けて緊急逮捕するシーンもすごく格好良かった。鋭さも迫力もしっかりあるんだけど、男勝りな感じになるのではなく、何処かしなやかさや品が漂うところが吉田さんならではの魅力だなと感じます。心太朗に食事に誘われた時の「デートの誘い？」という揶揄ったような口調や「行くわけないでしょ」と断りつつ、去り際の表情が満更でもなさそうな笑顔だったのも、二人の関係の進展を予期させて良かったと思います。

宇佐美に拳銃を突き付ける心太朗を止めようとする泉を制するシーンが、佐久良の心太朗への信頼の深さを感じさせて良かったです。いよいよ発砲するという瞬間に自ら制止に入るところも、自分の判断に命がけで責任を持つ佐久良の芯の強さや刑事のプライドが感じられて格好良かったです。

カナカナが作ったお弁当を「こういったものは受け取れない」と頑なに拒否していた心太朗と違い、「せっかくだから」と遠慮せず食べ始める姿が、佐久良の柔軟な性格を感じさせました。心太朗と一緒に青嶌を追求するシーンでは互いの役割を把握し合った息ぴったりなやりとりを見せてくれて格好良かったです。ふとした会話の端々に心太朗の長所も短所も全て理解している元恋人らしい距離感が滲み出ているところも良いと思います。

感情的になって犯人を取り押さえた泉に「こういう時こそ冷静にならないと命落とすよ！」と叱咤するシーンが印象的でした。口調も表情も今まで見たことないくらい鋭く厳しくて、本気で心配して怒っているのが伝わってきたのが良かったです。駅のホームで逃げる犯人を追うよう部下に指示を出す時もそうだけど、声がよく通り、たった一言の台詞でもピンと張り詰めた緊張感が伝わってくるところがさすがです。

皆実も気付かなかった千春の策略を見抜くシーンがとても格好良かったです。すべての疑問を解決するまでとことん調べるという佐久良の刑事としての信念が垣間見れたのも良かったし、手柄を取られてもそれだけで終わらせない強さや隙の無さが「気が抜けない相手」と皆実が一目を置く説得力を感じさせました。「利用しない手はない」と広報誌で皆実と対談を行うところも、女性初の一課長目前と言われる佐久良のしたたかさが感じられて良かったと思います。

完全に仕事モードで隙のない感じなのに、皆見さんの前では調子が狂うのか本心がポロッと出ちゃうところが人間味があっていいなと思います。思わず護道をそんな人じゃないと言ったりする時は思わず二度見したくなります。

心太朗に手柄を横取りされたくないという対抗心や敵対心を覗かせつつ、元恋人として彼の人間性を誰よりも信頼しているのが伝わる絶妙な演技がさすがです。心太朗と二人きりの時の遠慮のないくだけた口調も二人の距離の近さを感じさせて良かった。護道の代わりに皆実をエスコートするシーンも、階段の数や曲がり角など、初めてとは思えない無駄のない的確な指示でサポートしていて、佐久良の有能さや賢さが伝わってきて良かったと思います。

皆実に調書を褒められた時の嬉しそうな、ちょっと頬が緩んだ表情がキリっと凛々しい普段の姿とギャップがあって可愛らしかったです。皆実の勝手な行動に抗議する時も、日本の警察としての意地とプライドが伝わってきたし、迷いなく部下に次々と指示を出す頼もしい姿も佐久良の有能さが感じられて格好良かったです。