おむすび

派手な服を誰かに笑われないかと小さくなる聖人を関係ない、他人だ！と切り捨てたり、ジャズは教わるものじゃないと聖人に新しい世界を見せたりとしっかりなべべの世界を見せてくれました。登場は多くないのになべさんの気持ちはちゃんと変化していてすごいなと思います。

昭和の職人気質の頑固さ、それゆえに後悔を残したままの娘との別れ。娘の死を鼻水を流しながら、訥々と語るシーンは泣けました。

ただあの混乱の中で、そう都合よくワンカップなんて手にして、酒飲む奴がいたのかな？阪神淡路大震災の現場は直に見てないけど、少なくとも東日本大震災ではそんな奴はいなかった。

酒でも飲まなきゃやってられないっていうのは、むしろまともな時の思考だと思う。この世の終わりかと思えるほどの災害を目の当たりにすると、酒を飲むことすら気力と体力がいるんだと気付く。その意味で、酒を持たせたのには首を傾げる。むしろ彼には似合わないような清涼飲料水とか、ミスマッチで異常さを表現した方が良かったかな。

まあそこは緒形さんの演技の問題ではないのですが。

娘が死んでしまったことを震える手でお酒を持ちながら話すところがとてもリアルでこちらまで心が震えました。ついさっきまで昨日の晩まで元気にしていた娘が今はもういない。あり得ないことが起きた恐怖と悲しみがとても伝わってきました。