アイゾウ 警視庁・心理分析捜査班

兄が弟を殺したと仮定すれば全ては想定内に収まるだろう。兄としたら自分が起こした殺人が一生バレずに済むし、弟がいなくなったことですっかり元気がなくなってしまった母親をまた元気にすることができるのだから一石二鳥にも三鳥にもなる話に乗らないはずがない。ただ弟のふりをした得体の知れない男を弟として迎えた兄はやっぱりイカれていると思う。なりすました男は写真の中の司くんに怖がっていたけど、ほんとはお兄さんの狂気を感じ取っていたのかもしれない。

名乗り出た男が司ではなく成りすましであることは大方の予想通りでした。ＤＮＡの偽装をしていたということは、兄がどういう理由からか、男が弟の司ではないと気づいていたわけで、母親のことを思って他人であるという判定がでないようにしたとも考えられなくはないけど、それよりは兄はそれが司ではないと「確実に」知っていたと考える方が自然です。なぜ知っていたのかは、その死に自分が関わっているからだと推測できる。問題は母親です。霧子の推測通り、兄の犯行に気づいていたのか、そして警察が来たことを伝えたのか、あの母親の状態では真相はわかりません。でも結果がすべてを物語っているのかもしれません。なかなか怖い話でした。

11歳だった子供が失踪して7年。18か。子供の顔は変わるからね。ずっと戻ってきてほしいと願っていた我が子が戻ってきたなら無我夢中で愛してしまうと思う。そこで不思議に思ったことが一つ。どうして発見されてからすぐにDNA鑑定をしなかったのか？意思疎通に問題のない成人がそうだと言ったらそれ以上調べることはしないのか？記憶喪失なら尚更、物的証拠が必要に感じるが違うのか？もし帰ってきたと思っていた息子が別人だったら‥もう生きる気力が湧かないかもしれないから慎重に再会させてほしかった。

久世の理屈はちょっとおかしいですね。霧子の主張が正しくて、誰かが司に成り代わっていたとしたら、目的や理由なんて本人にしかわかる筈はなく、外野が推測してもしょうがない。それに身内が頼んだDNA鑑定なんて、サンプルを適当に誤魔化すことができるから当てにはならない。そして彼が成り代わっているとしたら、本物の司の情報を持っている可能性が高く、結果として司の失踪について真相に近づくことができる。だからこそ霧子の疑念はしっかりと晴らしておくべきだと思います。まあどこかで本物の司から話を聞き、家庭というものを感じたくなって成り代わった可能性が高そうです。司の母と兄の優しさに付け込むのがいたたまれなくなり、真実を話すといった展開でしょうか。

愛し方なんて誰に教わるものでもなく恋愛のルールだって曖昧なものだからこそ、その人のクセというか嗜好がかなり影響してしまうと思う。そして愛しているからなんて理由で人を殺すこともあり得るのだからこれほど厄介なものもないのかもしれない。真面目にやってきた人に遅くやってきた初恋の威力は凄まじい。奥さんから自分への感情も紛れもない愛なのに、それは違うと否定してしまうところがどこまでも自分勝手で悲しかった。いつかその気持ちも冷めて正気に戻った時、何を思うのか知りたくなった。

遅れて来た初恋のようなもの、とは言い得て妙です。それって麻疹とか風疹とかみたいに、遅くなるほどこじれて厄介なものになる。理人は愛の強度について語っていましたが、相手に盲目になった時点で、強度なんてものは関係なく、ただの奴隷。そうなる愛ではなくただの依存。少しでも冷静さがあれば、亜里香の胸元の痣がＤＶではなく狂言の可能性があると気付く筈でした。ＤＶはやられる側も隠す傾向があり、わざわざ胸元を大きくあけて見えるようになんてしない方が多い。おそらく霧子もそう判断したのでしょう。まあいずれにせよ、愛は他人には理解できないという霧子の言葉が正解だし、そこに愛の深さと怖さがあるのだと思います。

男性からの一方的な好意によるストーカーでよくある旦那さえいなければ彼女は自分のもの的な思考回路の元の殺人‥で終わるわけないですよね？ダブル不倫の末にDV夫を始末してほしいと頼まれたのか？どちらにしても彼女に旦那を殺してその罰を受けるのを厭わないほど入れ込んでいたのは確かです。そうなると辺見の妻はどう転んでも辛いだけ。それなのに情報提供を呼びかけるとか健気すぎて気の毒になる。夫婦仲は悪くなかったってことだよね？愛情が誰にどう向いているのか分からなくて真相が見えないのが面白い。

520が中国語のウォーアイニーの符号だというのは初めて知りました。普通の日本人は知らないでしょうし、中国に留学していたという亜里香が考えて辺見に指示したという霧子の推測は正しいでしょう。やはりポイントは辺見の動機ですね。亜里香の痣はもしかすると殺された旦那によるDVの痕かもしれません。不倫関係に陥った辺見が彼女を暴力旦那から助けようと殺したと仮定しても、10数年の刑期と割りが合う気がしません。もっと辺見が罪をかぶるべき何かがありそうです。

キラキラネームが事件解決の鍵になりました。茂岡みたいな男に狙われると、ＳＮＳのような脆弱なメディアは釣り針のように相手を引っかける道具になり得ます。でも息子の将来はもちろん、自分自身の幸せを願う若いシングルマザーが、そこに出会いを求めることが、愚かだと言いきれる人はいないでしょう。それにしても実千瑠は男を見る目がなさすぎです。関わった男、三人とも最低のクズ。何よりもそこが一番致命的なところだったと言えます。不幸そうな、あるいは寂しそうな女性をたらしこむのが上手い男っているからね。恋愛はいつの時代でもリスクが付きまとう。だから沼なんだろうけど。

昔あった本物の事件をもとにして作ったドラマって言うからどんな珍しいものが見れるのかと思っていたら、トリックとしては全然面白くないしどうしてこの事件を取り上げたのかが全く分からなかった。マッチングアプリでなりすました粘着質の昔の彼に殺されるって３人も怪しい候補がいながらなんの捻りもなく面白くない。そのヒントが息子のキラキラネームってところも推理には必要だったかもだけど、おー！と思うようなこともない。もっと面白い題材があると思うんだけどな。

マッチングアプリに釣りのアカウントを用意してまで彼女を呼び出したのは誰なのか？あんまり頭の切れそうなキャラクターが出てこなかったので犯人が浮かばない。ただ殺した後、元夫に子供を託している辺りはもしかしたら不倫相手の男の妻って可能性はないだろうか？女は憎いけれど一人残される子供は心配とか。妊娠中なら尚更子供のことは気にかかるでしょ。
まぁ殺されてしまったことは気の毒だけど、子供を家に残して遊び歩くような女は地獄行きでいいと思うけどね。

マッチングアプリ、なりすまし、 ネグレクト、キラキラネームと、いろいろな要素をぶち込んでいますね。いずれにせよ犯人は三人のうちの誰かに絞られました。息子の名前を輝星と変換せず、ダイヤとカタカナで表記している辺りに、犯人を探し出すヒントがありそうです。また霧子のキャラの崩壊度が増しています。わざとでしょうか？久世がいないのは演じる津田さんの都合？何かと気になる点はありますが、犯人探しとしては、まあまあ面白い展開だと思います。

結局得したのは壮太だけっていうのがなんとも後味の悪い結果となりました。意中の彼女と一緒になるために、さやかを本命だと思わせて障害になる奥さんを殺すように仕向けるなんて極悪人ですよね。トチ狂ったさやかと付き合うにはそのくらいうわての人じゃないと太刀打ちできないのかもしれないとも思うけど、何もかも失って刑務所暮らしとなるさやかが少し不憫でもありました。病的な部分もあるので適切な更生が行われたらいいですね。

結局、清香は理想の家族というものが本当はわからないから、幸せな家庭の形をそのまま奪うことにしたのかもしれませんね。金言がたくさんありました。「アプローチにも美学と節度がいる」とか「恋をしながら賢くは無理」とか「私の罪は彼の言葉を信じた愚かさ」とか。見事なアフォリズムの世界です。まあ何にせよ一番最低なのは壮太なわけで、そいつが幸せそうにのうのうと生きている現実は、世の中の虚しさと憤りを感じさせます。いずれにしても不倫なんてロクなことはないということでしょう。

だいたい話好きな人だったら理路整然と話すことができるし、参考人として何度も同じことを聞かれればどんどん喋りもうまく上手に話せるようになるだろう。粗もないのにそれが怪しいと言われたらもう何の罪でも捕まる気しかしないわ。奥さんが何で殺されたのかはまだ分からないけれど、旦那さんには不倫する相手はちゃんと選びなよ！と言いたい。変な相手と関わったばっかりに一家滅亡なんて冗談じゃない。綺麗に遊べない男は不倫なんかするんじゃない！

よくある心理分析をもとにした刑事ものですが、個人的にはあんまり心理分析とか信じていないんですよね。たとえばこのドラマの中で「常習的に犯罪を犯すものは理路整然と話す」とか言っている場面がありましたが、私なら犯人逮捕につながるよう、できるだけ頭の中を整理して、しっかり理路整然と話すように心がけるでしょう。さて、私は犯罪者でしょうか？と問いかけたくなります。まあ何にしても霧子のようなストーカーはちょっと怖いですね。犯罪の時間は動かない。となれば動かせるのは容疑者となる人間の方。だから霧子は怖い女だけど、犯人かどうかはまだわからないですね。