フェルマーの料理

岳のために皆に頭を下げて協力を頼んだり、当日も助っ人として厨房に駆けつけたり、別れの時には「頑張れよ」とグータッチでエールを送ったり、あんなことがあった後も岳のために尽力して応援する真っすぐな姿が格好良かったです。最初の頃の棘のある感じから、回を追うごとに内面も料理人としても成長していく頼もしい姿と、岳とわちゃわちゃ騒ぐ高校生男子みたいな幼い姿とのギャップも良かったです。

変わってしまった岳に「俺たちのことなんだと思ってるんだ」と悔し涙を浮かべて訴える姿が印象的でした。親友なのに何も相談して貰えないもどかしさ、「どうせ分からない」と端から諦められている悔しさ・憤り、孫六の複雑な思いが伝わってきて切なくて苦しかったです。去り際の「信じてた」という絞り出すような呟きと岳を真っすぐ見つめる眼差しが、岳との決別の覚悟を感じさせたのも良かったと思います。

料理長は岳しかいないと思うと真っ先に口を開いたり、「今の岳に何が出来るのか見てみたい」とワクワクした表情を見せたり、親友として一番近くで岳の凄さを見てきた孫六らしい、岳へのリスペクトと期待が感じられる姿が良かったです。最初の頃のピリついた空気が嘘のような強い絆と信頼が伝わってきて、良い仲間になれたんだなあとグッときてしまいました。ライバルの才能をちゃんと認めて、追い越されても腐らずに自分が今出来ることを精一杯こなす姿が料理人としてのプライドを感じさせて格好良いです。

広瀬のことで不安になる岳に「絶対大丈夫。マジで上手いから」とサムズアップして励ましたり「戦え！」と力強く背中を押したり、無事に広瀬から「美味しい」と言ってもらえた時は自分のことのように喜んで抱きついたり、嫉妬したりモヤモヤする姿もあったけど、その気持ちを引きずることなく親友として、仕事仲間として岳を支える姿が格好良かったです。「良いヤツ」って言葉が似合うキャラだけど、負の感情も取り繕うことなく見せてくれるので、ただの良い子ちゃんみたいな嫌味さや噓臭さがないところも良いと思います。

コンペには出ないと言い出す岳を「出た方が良い」「海さんに期待されてるの分かってるだろ」と諭して背中を押す姿がとても良かったです。ライバルが減ってラッキーではなく、岳のことをちゃんと考えて励ますところが孫六の人柄の良さと二人の確かな友情を感じさせました。ザ・少年漫画の定番って感じのやりとりだけど、二人が醸し出す空気感や芝居が本当に仲良しって感じでリアリティがあって、薄っぺらく見えなかったのも良かったです。

魚見や武蔵を意識して何度も腕まくりする姿が面白かったです。前回も岳に腕まくりの拘りを熱弁してたもんなあ。ここぞとばかりにアピールしまくるところが素直で可愛らしかったです。岳とすっかり仲良しで二人でいる時は高校の同級生みたいなノリだけど、厨房ではスピーディーで迷いのない動きやテキパキとした仕事っぷりが見事で、岳より経験が豊富な先輩だと一目瞭然なところも良いと思います。

岳とすっかり仲良くなっている姿にほっこりしました。一緒に買い出し行ってる時も、前菜作りの相談に乗る時もすごく楽しそうで、二人の間に流れる空気が良い感じに緩くてリラックスしていて、仲良しっぷりが伝わってくるのも良かったです。岳の前菜が綿貫に絶賛された時も「すげえじゃん！」と自分のことのように大喜びしていて、二人の微笑ましい友情だけでなく孫六の内面の成長が感じられたのも良かったと思います。

刺すように鋭かったり、伏し目がちだったり、涙が溢れ出そうだったり、目の表現だけで岳への嫉妬や焦り、焦燥感が伝わってくる丁寧で繊細な演技がとても良かったです。岳が作った料理を泣きながら手づかみで貪るように食べるシーンも切なくて良かった。岳に「孫六」と呼ばれたときの照れ臭さと嬉しさが入り混じったような笑顔や、互いの名前を呼び合ってじゃれ合う姿も二人の間に芽生えた友情と絆が感じられてグッときました。

岳への棘のある発言や面白くなさそうな表情が、年齢の近い岳への対抗心や才能への嫉妬など複雑な思いを感じさせました。岳の作った賄を正当に評価して絶賛する確かな舌と公正さもあって、単なる嫌味なヤツになっていないところも良かったです。