フェルマーの料理

岳は第1形態の料理を知りたての面白くて仕方ないホワホワした岳から変化して第二形態のトゲトゲした孤高の岳になってそれからまた第1形態に戻ってしまった。いろいろ経験しての第三形態があっても良かったんじゃないかなと思った。

夢中になると周りが見えなくなってしまったり、興奮気味に自分の立てた数式を早口で説明したり、過去の挫折やプレッシャーに負けそうになったり、天才ゆえの危うさや繊細さ、純粋さを丁寧に演じていて良かったと思います。料理の楽しさに目覚め、海や布袋に憧れを抱くキラキラしたピュアな表情と、闇落ち後の何かに取り憑かれたような凄みのある姿のギャップも印象的でした。ラスト、海と一緒に料理をしている時の穏やかで楽しそうな笑顔も良かったし、阿吽の呼吸で調理を進める姿が二人の信頼関係の深さを感じさせたのも良かったです。

かいがいなくなって背負うプレッシャーも半端じゃない。顔つきもどんどんキツくなり周りに誰も寄せつけないオーラを放つ。相手を追い詰めるような言い方がより孤独を深くする。レシピが思いついた時の顔は恍惚としていて常人の域を超えてしまったのだと感じた。

仲間を激しく責め立てて信じることもせず、最高のフルコースを作るということに囚われ過ぎて「お客様に料理を提供する」という料理人の基本すら頭から抜け落ちて、取り憑かれたようにどんどん自分を追い込んでいく姿が痛々しくて見ていて辛かったです。孤高を極めようと気を張って必死になっている時の顔と、自分の過ちに気付いた時の憑きものが落ちたような穏やかな雰囲気、表情や醸し出す空気で岳の内面の変化がしっかり伝わってくる丁寧で繊細な表現力も良かったと思います。

料理長として、仲間と協力し合って店を回す生き生きとした姿や、自信を深めていって皆と笑い合ったりグータッチをして喜ぶ笑顔、西門への毅然とした対応、どれもとても良い顔をしていたから、余計に2024年の変貌っぷりが辛い。髪型もコックコートも同じなのに、覚醒前と覚醒後では別人のように目の鋭さが違うところも凄かったです。

広瀬のことで気持ちが落ち着かなかったり、不安になって落ち込んだり、思っていることを上手く言語化出来なくてモヤモヤしていたり、かと思えば仲間や朝倉の一言でパッと浮上して生き生きとし始めたり、感情の起伏が良くも悪くも激しくて、没頭すると周りが見えなくなるところが天才らしさを感じさせて良いですね。魚見への超鈍感な態度や、朝倉への真っすぐな憧れなど、岳のピュアさや可愛らしさをあざとくなく自然に演じているところも良いと思います。

1話からずっと岳の純粋さや素直さを丁寧に演じているからか、朝倉や布袋への尊敬や憧れがお世辞や嘘っぽく聞こえず、心からの真っすぐな言葉なんだなと感じられるところが良かったです。人と競うのが苦手と弱気になる不安げな表情や、それでも答えの出ない難問を前にすると怖さよりも「楽しい」という気持ちが上回って夢中になってしまう姿など、ころころ変わる感情豊かな姿が若さゆえの不安定さや岳の伸びシロを感じさせるところも良かったです。

蘭菜を一人にはしないと一生懸命奔走する姿が頼もしくて、岳の内面の成長を感じさせました。蘭菜の表情をじっと窺ったり、親子のやりとりの際も遠慮がちに微妙に視線を外す配慮をしたりと、相手を気遣う素振りを何度も見られて、独りよがりな鬱陶しいお節介に見えないところも良かった。女心に鈍いところも岳のピュアさが感じられて良かったと思います。

驚いて目を見張ったり息を呑んだり、眉間に皺を寄せて悩んでいたり、美味しいものを食べた時はパアっと嬉しそうな笑顔になったり、感情のままに変わる豊かな表情が岳の素直な性格を感じさせて良いと思います。生き生きと楽しそうな姿も印象的で、苦しくて大変なことも多いけど料理の世界が楽しくて仕方ないっていう充実感が伝わってくるのも良いですね。孫六とすっかり仲良しになっている姿もほのぼのと微笑ましかったです。

何かに閃いた時のキラキラした目や周りが見えてないくらい夢中で調理に没頭する姿が、料理が楽しくて仕方ないっていうワクワクした気持ちを感じさせて良いですね。1年後の荒んだ表情とは別人のようで、あんなに変わってしまうなんて一体何があったんだろうと好奇心を掻き立てられます。孫六との友情も微笑ましかった。「先輩はすごい人なんです」と武蔵の前で孫六を絶賛するシーンも、興奮した様子で心底嬉しそうに、誇らしげに語るから全然嫌味やご機嫌取りに聞こえないのも良かったし、岳の素直さや真っすぐさが伝わってきたのも良かったと思います。

今のガクを見ていると夢の入り口にたった一年生って感じがします。憧れや目標に向かって自分自身を研鑽する様子が初々しい。なにより分かった！やできた！の時にふわっと笑うところが全てを楽しんでいる気がして温かい気持ちになります。

飲食店の行列や、調理場のスタッフの動線、肉じゃがの調理工程など、自分が立てた法則・数式について解説する時の早口気味な口調や高揚した様子、キラキラした楽しそうな表情が捨てきれぬ数学への情熱を感じさせて良かったです。捲し立てるような早口だけど台詞が流れず聞き取りやすいところも良かった。焦ったり落ち込んだり、喜んだり戸惑ったり、感情が全部顔に出てしまうところも岳の幼さや素直さが感じられて良かったです。

冒頭のヒステリックな1年後の姿と、高校生時代のあどけなさの残る表情のギャップが凄くて、たった１年で岳の身に何があったんだろう、どうしてこんなに変わってしまったんだろうとドラマの世界観にグッと引き込まれました。雨の中、学園長に土下座して必死に謝る姿や、父親の前で無理をして笑っている姿、数学者にはなれないと悟った時の光を失ったような眼差し、表情一つ一つから岳の複雑な心境が伝わってくる繊細な演技もとても良かったと思います。