ハヤブサ消防団

聖母として崇められる存在になったけど、ある意味でこの展子も教団の被害者だと言えるかもしれません。もしかしたら宗教史に残る教祖やメシアの多くは、展子と同じで、残った人たちに「違う者」にされてしまった人たちなのかもしれません。そこがちょっと切ないですね。展子を演じる小林さんですが、「魔王」以来、あまり印象に残る芝居はなかったのですが、儚さと現実感、特別と虚構など、複雑な要素を背負った人物を、しっかり印象に残るような芝居で見せてくれたと思います。

映子と散策している時の楽しそうな笑顔や夜の街で働いている時の荒んだ虚ろな表情、余命僅かとなった病室での姿、飛び飛びの短い回想シーンでも展子の人生が目に浮かぶような説得力のある演技がとても良かったです。どこか生身の人間っぽくないというか、浮世離れしたふわっと儚げな雰囲気を保ちつつ、写真と回想シーンだけという短い出番でも全話通して存在感をしっかり示していた芝居のバランス感覚も素晴らしいと思います。

可憐で儚さもあってみんなが崇める対象になるにはうってつけの人物だったのでしょう。微笑みもどこか儚くて写真でさえも惹きつけるものがありました。病室での変わり果てた姿はメイクのおかげもありますが凄まじく変化していて驚きました。

信者たちに向ける慈しむような笑みやフワっと柔らかく手を差し伸べる姿、包容力や母性も感じさせるのに何処か儚く浮世離れした雰囲気もあって、聖母として神格化されて崇められるのも分かります。台詞もなく出番も少ないのに、こんなに存在感を出せるところも凄い。演技力のある方なので、最終回ではしっかり芝居をしている姿も見たいです。

ほぼ写真のみの登場だったけど、どこか儚さのある美しい微笑みが印象的で、三馬たちが「何か気になる」と素性を調べ始める説得力がありました。薄幸そうな雰囲気やミステリアスさもあり、どういう人なんだろうと視聴者の好奇心を掻き立てるところも良かったし、写真だけでも十分インパクトがあって存在感を示していたのも良かったと思います。