けむたい姉とずるい妹

こういうのって綱引きと一緒でお互いが引っ張ってるから意地になって手放さないけど、相手が興味を失って縄を放置したらお互いにどうでも良くなっちゃうことなんだよね。大人になって何やってんだとも思うけど、再会して一緒に住んで大嫌いと言い合えて、その過程があって手放せたこともあると思うから無駄なことってないなと思う。2人の張り詰めていたものが緩んでいい距離感になるまでちゃんと見れてよかった。乗り越えるのは自分、と教えてもらったような気がする。

身内でドロドロしたやつって縁を切りたくても切れないし見ていてしんどくなることもあるけど、この脚本はよくできていると思う。姉は姉だけの視点で描かれ、妹は妹だけの視点で描かれているから嘘がない。だけど真実は別物。そこが面白い。2人が見ていたお母さんも違うし叔母さんから見た妹も違う。多分お母さんはらんちゃんと似ていて同族嫌悪があったのだろう。だから遠ざけたしじゅんちゃんをかわいがった。我が子を愛せない人がいることは分かっているけど、頭を撫でられたいという願望が叶うことがなかったらんちゃんの孤独を思うと胸が痛い。

予告を見ていたので律が懐かしさでじゅんちゃんに手を出したけれどその果実は思ったほど美味しくなかったって展開なのかと思ったら、案外2人ともがこの恋愛に浮かれていて安心した。最後は気の迷いってことになったとしても、2人がお互いのことをすごく好きだった時期があるならその後のことは仕方ない。ただ律を選んだ時点で姉妹共々相手と比べられるって予想はついたはずだよね。じゅんちゃんの方がよかった、らんちゃんのほうが良かったって思われるの嫌じゃないのかね？別の男にしておきなよっていつも思う。

律は2人にとってのあの赤い魔法のおもちゃなんだろうね。どんな魅力があるというよりもどちらの律かが問題。あのネックレスのようにらんが律の元に行った時点でその程度の男ならくれてやると思えればここまでにならなかったし、少しでもらんにじゅんを思いやる気持ちがあって2人の姿を見せないとかすれば違ったものを。ここまでくるとどっちもどっちで他人である視聴者は勝手にしてくれ！と思わなくもない。行くも地獄戻るも地獄。律ってそこまでいい男か？と2人に問いたい。

律はじゅんのことが手に入りそうだったのにそのままおあずけ喰らったからいまだにまだ引きずっていて、美しいなんて神格化してるんでしょ？じゅんは自分が奪えるって思ってそうだけど、手に入ってなんでも知られてしまったららんと同等になるって分からないのかな。っていうかなんで最初に誤解を解かなかったのか分からないし、なんでらんと結婚したのかも分からない。仲の悪い兄弟ほど近くに住む不思議。もう親もいないんだしお互い離れて暮らせば何にも問題ないのにね。

実家も欲しけりゃ律も渡したくない、そう考えているならうまく行かない。実家は姉にあげてしまえばいいのにと思う。そうこうしているうちに律はじゅんちゃんの方へ気持ちを向けていっている。でもらんは本当に気づいていないのだろうか？キスをすればタバコの匂いに気づかないはずがない。タバコを毛嫌いするらんならとっくに気づくだろう。タバコを排除することは姉の痕跡を排除すること。そんなに嫌いなら一緒に住まなきゃいいのにね。

律の全部を手に入れたと思っているらんと、律を取られたじゅん。だけど律にとってはらんといることは自然で特別じゃなくなって、手に入れられなかったじゅんのことは律の中でどんどん特別なものとなる。皮肉だなと思いました。自分だったらどっちの女になりたいだろうか、究極の選択だなと思いました。らんにはらんの思いがあって寂しい思いをしたんだなと思ったけれど、だから姉のものを奪ってやったって時点でダメなやつだと思ってしまった。やっぱりらんは好きになれない。

こういうのを見ると一人っ子でよかったと心底思うし、きょうだい児を育てる難しさをとても感じます。母親が死んでから姉も妹も家を自分のものにしようとやってくる。母親からの愛情を一番に感じたいんですかね。姉目線で物語が進むので妹の理不尽さばかりに目がいき姉の味方になってしまいそうですが、妹のつぶやきを聞くと妹目線ではまた違う展開になりそうです。でもまぁ、仲がどうあれ姉妹の間で揺れた男が一番タチが悪いと思いますね。