ONE DAY〜聖夜のから騒ぎ〜

局長というよりは中間管理職っぽい感じでしたね。まあもっと偉い人がいるから、そこと攻防戦の兼ね合いでこういうキャラになったのでしょう。本来なら局長レベルなら、もっとどっしりしていて良いと思います。ただそこは演出との兼ね合いもあるからね。小手さんって、意外に貫禄も出せるし、卑屈な感じもうまい。なのでこの役作りは演出家の指示が強いのでしょう。なので役作りは別として、芝居に関してはメリハリも効いているし、彼のゴーサインで皆が一斉に動き出すところなど、物語自体のテンポを変えるキーになっていました。個人的には小手さんの声もいいなと思います。

桔梗と中継が繋がった時の「大スクープだ！」という大きな叫び声や興奮で潤んだ目がとても良かったです。桔梗も以前言っていたけど、この瞬間があるから報道の仕事がやめられないんだろうなっていう説得力がありました。社長からの許可が下りたあと「しっかり放送するぞ」と力強くスタッフに声をかける姿もやる気に満ち溢れていて格好良かったです。

ニュースを止めさせようとする社長に「番組編成の権限は局長である私にあるんです！」と顔を真っ赤にして宣言する姿が、絶対にこのスクープを報道するんだという折口の意地と覚悟が感じられて格好良かったです。目一杯社長に歯向かったかと思えば、急に不安で胃が痛そうになってたり、ちょいちょい覚悟が揺らいでしまうところも人間味があって良いと思います。

報道するっていう覚悟は決まったけど、誠司が実は撃たれていなかったという大スクープに動揺してどもってしまったり、警察のトップが絡んでると知って頭を抱えたり、生番組をジャックするという桔梗の提案に無言で首を振り続けていたり、直接言葉には出さなくても、ちょっとした仕草や表情の変化で折口の相変わらずの小心者っぷりを表現しているところが良かったです。いつも胃が痛そうで気が休まらなくて、板挟みの中間管理職って大変だなって気の毒になってつい応援したくなります。

「自分が情けない、最低の上司だ」と悔やんで自ら査子の監禁場所まで助けに走るシーンが格好良かったです。フラフラになりながら必死で走る姿や「大丈夫か、怪我はないか」と駆け寄るところも、本気で彼女を心配していて、無事な姿に心底ホッとした様子が伝わってきて良かったです。「この事件、報道するぞ」と力強く宣言する姿も折口の覚悟と報道マンとしてのプライドが感じられてとても頼もしかったです。

桔梗がまだ諦めていないと知って胸が苦しくなったり頭を掻きむしったり、心が休まらない姿が気の毒なんだけど、何処かコミカルさもあって深刻になり過ぎないところが、ドラマ全体のバランスに合っていて良かったです。軽すぎるとレストランパートと被って鬱陶しいし、かと言ってシリアス過ぎると事件を追ってることもあって逃亡犯パートとの区別が曖昧になってしまうし、その辺りの塩梅が絶妙なところがさすがだなと思います。

桔梗とのよこテレちゃんを巡るくだり、気軽な空気感やくだけた口調、素っぽい反応が同期らしいリラックスした雰囲気を感じさせて良かったです。桔梗を呼び止める時に気まずそうな表情を浮かべているところも、直接の言葉は無かったけど、社長を説得できず事件の報道が出来なかった後ろめたさや申し訳ない気持ちが伝わってきて良かったです。

桔梗の取って来たスクープに手応えを感じて報道したいと思う気持ちと、社長の命令には逆らえないサラリーマンの立場、板挟みになって苦悩して葛藤する気持ちが「俺だってやりたかったよ！」という力強い叫び声に込められているようで、たった一言の台詞だったけどとても印象深かったです。結果的に社長に逆らえなかったけど、報道に携わる人間としてのプライドや意欲が感じられたのは良かったと思います。

「これ以上社長に楯突くなよ」と桔梗を諭すシーン、報道制作局長としての責任感だけでなく、桔梗の立場を心配する優しさや同期愛が感じられたのが良かったです。桔梗がショックを受けていないか気遣うような温かい眼差しも、遠慮のないくだけた口調も、ずっと一緒にやってきた桔梗との盟友関係が感じられて良かったと思います。