フェルマーの料理

一部の情報でこのドラマの低調の原因は小芝さんなんて書かれていたけどとんでもない。厨房の紅一点としてとても華があったし、自分に厳しくてストイックな蘭菜さんが厨房にいるだけで場が引き締まった気がします。十分与えられた役割を全うしたと思います。

岳に向ける鋭く冷たい視線が、店をめちゃくちゃにした岳への憤りや失望の深さを感じさせました。感情的になって怒鳴ったり泣き叫んだりするより、ずっと重くて強い怒りが伝わってきたのが良かったです。「好き勝手しないで」と手厳しい言葉を投げつつ、海と岳に協力してフルコース作りを手伝う姿も、もう1度海と一緒に料理がしたいという気持ちや、新しいスタートを切るための蘭菜なりのケジメが感じられて良かったです。

岳のやり方に憤って真っ先に店を辞めたり、Kを救ってと海にメールを送ったり、「2度とこの店で岳に料理はさせない」と言い放ったり、人一倍強いKへの思いが伝わってくる演技が良かったです。自分が後継者に選ばれなかった悔しさや、やっと取り戻した母親の店を岳から守らなければという強い意志など、蘭菜の複雑な感情が限られた出番でしっかり伝わってきたのも良かったと思います。

店のことを第一に考えて因縁相手の西門の話をちゃんと聞こうとする姿や、海の行動に納得出来なくて自らパリまで行って海の動向を調べるなど、随所で合理的ではっきり・きっぱりした蘭菜の性格が感じられるところが良かったと思います。西門に「この店には二度とお越しにならないでください」と毅然と言い放つ姿も格好良くて、仲間たちと一緒に海を待ち続けるという強い覚悟が感じられて良かったです。

海が岳を後継者にしようと焦っていることや、何かを隠していることにちゃんと気付いていて直接問い詰める姿が、他人の機微に聡い鋭くて正直な蘭菜らしさがあって良かったです。自分に何も教えてくれない海をもどかしく辛そうな表情で見つめる姿も、海が何を考えているか分からない不安や話して貰えない寂しさ、頼りにするのが自分ではなく岳だということへの複雑な思いが感じられて良かったです。

「料理の腕前は布袋さんに勝つ自信がある」と控えめな口調ながらはっきりと宣言する姿が蘭菜らしくて良かった。前回、過去を乗り越えて覚悟を決めた蘭菜だからこその成長と自信が感じられたし、誰にも媚びない正直なところも格好良かったです。褒める時も貶す時も、この人の言葉に嘘はないんだろうなと感じられたのも蘭菜の誠実さや真っすぐさが伝わってきて良かったと思います。

Kで西門と対峙する時の毅然とした姿、格好良かったです。客前に出ることを恐れて躊躇っていた時とは別人のような、キリっとした表情と迷いのない口調が「時代を変える」という蘭菜の覚悟と成長を感じさせました。陰湿な西門のやり方にずっとイライラしていたので「ついていきたいのはあなたじゃない」ときっぱり言い放つシーンもスカっとしました。

体力作りのために走って通勤していたり「もっと美味しくなる」と少しの妥協も許さなかったり、店を取り戻すために必死に頑張るストイックで自分に厳しい姿が格好良いです。一見素っ気ないけど、岳に核心をついたアドバイスをしたり、前菜の味をみてあげたり、意外と面倒見が良い一面が垣間見れたのも良かったです。あんかけ焼そばを食べた時の「うまッ」っていう笑顔や、レビューで絶賛された時の心底ホッとしたような様子など、ポーカーフェイスが崩れた時の素の表情も人間味があって素敵でした。

海に「この店が欲しいんで」とはっきり宣言したり、武蔵に名刺を渡して売り込んだり、打算的で野心を隠さない姿が印象的でした。「今は」とわざわざ強調していたのも気になる。武蔵に挨拶する時に丁寧だけど必要以上に媚びず、クールさを保っているところも蘭菜らしかったし、しょっちゅう岳を気にしている姿も蘭菜の見る目の確かさを感じさせて良かったです。

口調は冷たいし馴れ合うこともしないけど「今日から頑張んなよ」と岳に声を掛けたり、賄作りで工夫したことも全部気付いていたり、岳が調理する姿を観察するようにじっと見つめていたり、他のスタッフとは違って岳に興味を持っていて赤松なりに気に掛けていることが伝わってくる演技が良かったです。岳に自己紹介する時の親しみを感じさせる笑顔も、赤松が岳をＫの一員として認めたことが伝わってきて良かったと思います。

いつもより低めに作った声とあまり抑揚を感じさせない話し方、冷めたような表情が赤松のクールなキャラクターに合っていて良かったです。小柄で可愛らしい方だけど、こういう陰の感じさせるような役も無理してるように見せず、違和感なく演じられるところも上手いなと思います。海を語る時の遠慮のない口調から二人の距離の近さが感じられたのも良かったです。