ハヤブサ消防団

真鍋に猟銃を向けるシーン、本当に撃ってしまうのでは？というくらいの気迫と激しい怒りの感情が伝わってきてハラハラしました。猟銃の構え方も扱い方もスマートで手慣れている感じが出ていたのも良かった。周りの必死の叫びは聞こえないけど、宮原の静かな諭すような声はちゃんと届いて構えていた銃を下すところも、二人の長年培った強い絆や信頼関係の深さが感じられてグッときました。

基本はハヤブサ消防団の参謀的な役割を担っていますが、太郎が真鍋に撃たれた時には、今にも反撃して撃ち殺しそうな勢いで対峙し、まさに山原というキャラの本質が見えるシーンでした。きっと若い頃はもっと血の気が多くて、ヤンチャだったんでしょうね。そして消防団などでの関係を通して成長し、コミュニティの中でもまれて参謀的なポジションに座ったのかな。そんな人生が見えてくるような奥深さを感じるのは、原作がしっかりしているからだけでなく、生瀬さんの芝居が的を射っているからでしょう。

真鍋に猟銃を向けて隙を見て俊敏に動いて近づくところは動きがスムーズで慣れた動きに見えました。その眼圧から勝てる気がしないなと真鍋も思ったはず。何かあれば引き金を引くことに躊躇はしないように見えたので真鍋が怯んだのも納得です。

村岡の不倫写真を処分せず、再び利用する強かさと策士っぷりが、いつも冷静に物事をみて、先を見据えて行動する山原らしくて良かったです。「脅迫じゃなくてお願いしとるんや」と強めの圧で迫る姿も、絶対に受け入れるだろうという自信が漲っていて頼もしかったし、結果的に弱みに付け込んで脅してるんだけど、幼馴染ならではの距離の近さやリラックスした空気感のおかげか、見ていて嫌な気持ちにならないところも良いなと思いました。

省吾を問い詰める時も、省吾が亡くなった時に警察に放火の件を話す時も、ずっと冷静に理性を保っている姿が頼もしく、感情的な宮原と対照的で良かったと思います。真逆の二人だから喧嘩しつつも長年友人として傍にいられるんだろうなという説得力があったし、宮原の性格を熟知しているからこそ、自分が落ち着いてしっかりしなければという意地を感じさせたのも良かったです。

宮原に「お前と俺は腐れ縁」「一緒におらんとつまらん」と素直に気持ちを伝える姿が素敵。幼馴染で子供のころからずっとそばにいて、家族同然の関係なんだろうなって二人の絆の深さが感じられました。お互い遠慮がなくて喧嘩ばっかりなのも心を許し合ってるからこそだし、照れ臭くてもちゃんと言葉にして伝えるところが良いなあって思いました。賑やかでコミカルな役も楽しいけど、こういう渋さのある役も深みがあって格好良いです。

ドラマ撮影で見せた迫真の演技と決め台詞、格好良かったです。一番ノリノリで役になりきってる姿が普段のシャイで寡黙な姿と別人のようで、ドラマ好きっていう設定に説得力があったのも良かったです。放火事件についてコソコソ話す三馬と勘介をじっと見ていたり、何やら意味あり気に考え込んでいたり、ちょいちょい見せる何か知っていそうな雰囲気も怪しくて印象に残りました。

手慣れた様子でマムシを捕まえる姿がさすが地元民って感じで格好良かったです。甥っ子を使って情報を集めたり、村岡の弱みを握ってドラマ撮影の許可を得る姿もさすがの頼もしさだったし、ドラマのエキストラに立候補するところも、渋い見た目とギャップがあって可愛らしかったです。

病室での宮原とのシーン、とても良かったです。いつもの血の気の多い感じとは違う、二人の間に流れる落ち着いた静かな空気が新鮮で「生きているんだ」と命あることをしみじみ実感しているように感じられました。宮原に「ありがとな」とお礼を言う姿も、穏やかな口調と表情が素直な感謝の気持ちを感じさせてグッときたし、照れ臭くて宮原の顔が見られないところも何だか微笑ましくてほっこりしました。

寡黙で渋いキャラかと思いきや、事あるごとに宮原と喧嘩を始めるし、その言い合いも子供みたいにくだらないものだったり、酔うと泣き上戸になったり、人間味があって親しみを感じる姿が多く見られたのが良かったです。高校時代の回想シーンをご本人がやっちゃうのも面白かった。山原の渋さは崩さずに、クスっと笑えるコミカルさをちょっとずつ挟んでくるその絶妙な塩梅もさすがだなと思いました。

村人の飲み会にこういう厳しい人がいるからこれは消防団の飲み会なんだと認識できた。どんちゃん騒ぎの楽しいだけの集まりじゃない、地域の安全を守っているんだという責任みたいのをその態度に感じてとても良かったと思う。

コミカルなお芝居も好きだけど、こういう寡黙で渋い役も似合いますね。宮原と言い合いを始める血の気の多いところはあるし一見気難しそうだけど、消防団への入団を躊躇う太郎を気遣ったり、いざ入団が決まってメンバーが大盛り上がりしてる時も、後方で嬉しそうにそっとその様子を眺めていたり、随所で山原の仲間思いでちょっとシャイで面倒見の良い人柄が感じられるところも良かったと思います。