石子と羽男 そんなコトで訴えます？

証拠を得るために何度も食い下がって必死で頭を下げたり、その証拠を奪われそうになった時も抱きかかえて死守しようとしたり、襲われたにも関わらず証拠を奪われたことを何より悔しがっていたり、最終回も石子の「依頼人の力になりたい」という思いや正義感の強さが存分に感じられました。賢くてしっかりしていて完璧に見えるけど、その正義感の強さゆえに危険を顧みなかったり大胆な行動に出てしまう危なっかしい一面も、人間味があって良かったです。たまに見せるコミカルさやチャーミングな笑顔もお堅いキャラとギャップがあって可愛らしく、愛すべき魅力的なヒロインだったと思います。

大庭の逮捕で取り乱し、羽男に八つ当たりしつつも、それを自覚して「八当たりをしております」と正直に申告したり、動揺しつつもパラリーガルとして自分に何が出来るか考えて羽男に大庭への手紙を託したり、感情的になっても理性は失わず、気持ちと思考をちゃんとコントロール出来る姿が石子の芯の強さと精神力を感じさせて良かったです。強いけど羽男の優しい励ましに涙してしまう弱さもあって、そこが人間味があって魅力的だし、ホワっとした温かさや包容力もあって、羽男や逮捕された際の大庭、他人と接するのが苦手な拓など彼女と関わった人たちが自然と心を開く説得力があるところも良いと思います。

お父さんにキツイ言葉で責める時、言ったら傷つけることも分かってるから顔を見ないで真っ直ぐ前を向いた。言ったってどうにもならないことが分かっているけど溢れ出しちゃうから早口になる。石子の表情や伝え方で胸につかえていたものの大きさを知りました。素晴らしかったと思います。

綿郎を強い口調で責めるシーン、言葉はキツいけど表情は怒っているというより悲しげで、父を尊敬する気持ちや母に苦労をかけた憤りなど色んな感情が入り混じって心の整理がついていない様子が伝わってきました。最後、本音を語り合ってタメ口に戻るところもグッときました。綿郎の反応を見ずにさっさと台所に向かう姿も照れ隠しっぽさが感じられて微笑ましかったです。羽男とのやりとりもますます馴染んでテンポが良く、アドリブのような遊びも時々見られて、2人の会話を聞くだけでもとても楽しいです。

強引にひなを家に連れて帰ったり、美冬の父に会いに行った時も珍しく感情的になって相手を怒らせてしまったり、いつも以上に「絶対に助けたい」という思いが伝わってくるところが印象的でした。人生は良くも悪くもほんの少しのきっかけで変わってしまうということが身をもって分かっているこそ、ひな達の人生は自分が良い方向に導きたいという強く思ったんだろうなと見ていてちょっと切なくなりました。ひなに「おばさん」呼ばわりされた時のショックを受けた表情も可愛らしかったです。

羽男とのやり取りがとても微笑ましく息ぴったり、大庭さんが入る隙間がないのが今後を見越してなのかなとワクワクします。言葉遣いが丁寧でちょっと古めかしくて、それが古風な顔立ちの有村さんにとても合っていると思います。

羽男とのやりとりも今まで以上にテンポが良くて息が合っていたし、ドヤ顔の羽男を見つめる胡散臭そうな表情や、証言が聞けたかどうかの顔芸のくだりなど、2人の距離の近さだけでなく羽男をからかって楽しむようなお茶目さが垣間見れたのも良かったです。大庭と二人きりになるとあからさまに意識してドキドキしてたり、ハグされて目を丸くして驚く姿も初々しくて可愛らしかったです。

「口を出すのはすみません」と羽男に指摘されたことはきちんと受け止めて謝罪し、でも自分の考えや疑問ははっきりと口に出して納得出来ないことは何度も食い下がってと、真正面から羽男にぶつかっていく真っすぐさが羽男の相棒としてのプライドを感じさせて良かったです。羽男の不器用な優しさに触れて思わず泣いてしまうところも、その泣き顔を見られないよう背を向ける負けん気の強さも人間味があってとても良かったです。

羽男のお姉さんと会話する時も気になることがあるとつい尋問口調になっちゃったり、羽男にお酒を誘われた時も部屋ではなく非常階段だったりと真面目で律儀で崩れない石子が魅力的。羽男との掛け合いも絶妙でそりゃアオイくんも嫉妬しますよね。

依頼人の言葉を信じて諦めずに聞き込みをしたり、違法カジノの店員に捕まってしまった修羅場の状況でも被害者がここにいたことを証言して欲しいと必死で訴えたり、依頼人の人生がかかっているという責任と覚悟をしっかり持って仕事に取り組んでいるのが伝わってくる姿が格好良かったです。有能で機転も利くし、法に携わる人間としての自覚もしっかりあって、司法試験さえ受かってくれたらめちゃくちゃ良い弁護士になれるのになあってもどかしくなります。納豆の話を持ち出すという独特でちょっと不器用な飲みの誘い方も可愛らし方です。

正直、「石子」と言われるほど頭は堅くないし、融通が利かないというほどでもない。なんだか設定キャラとは随分と違っている印象を受けます。演出家が意図したことではないと思いますし、演技プランとしては失敗だと思うのですが、それではこの石子に魅力がないかと問われると、魅力はあると答えるしかありません。堅い女性の設定で、いろいろ細かくて厳しいところもあるのですが、有村さんが演じるとどこか不思議な色気が感じられます。これまであまりそういうのを感じさせないタイプの女優だったと思うのですが、年齢や経験と共ににじみ出てくるものなのでしょう。細かな設定や矛盾をまあいいかと思わせるものがあります。このまま成長すれば綾瀬はるかさん、そして吉永小百合さんのようになるかもしれませんね。

山田監督を見かけた時の「あちらの方」と両手でそっと指し示したり、一礼してから隣に座るなど、口調だけでなくちょっとした仕草も丁寧で礼儀正しくて、石子の真面目さが伝わってくるところが良いですね。「金の亡者です」っておどけてみたり、小声でお願いする羽男を「なーに？」って嬉しそうに弄ったり、真面目なだけでなくふざける姿もたびたび見られるようになってきて、羽男との信頼関係や距離の縮まりが感じられたのも良かったです。

真面目できちっとしていて口調も堅めだけど、柔らかな笑顔や大庭の小話にきょとんとする顔、羽男と言い合う時の子供みたいにムキになった態度など、ポーカーフェイスかと思いきや意外とコロコロ変わる表情の変化が可愛くて魅力的。瑛子の力になれたらと子どもたちに聞き取りをしたり、母子家庭の支援先を紹介したり、自分の母と重ねているのもあるだろうけど、誰かの助けになれたらという石子の優しさや正義感の強さが感じられたのも良かったと思います。

石子と羽男の会話のテンポがよく聞いていてとても心地よくなります。真実を知ろうと突っ走っちゃうエネルギッシュなところも石子らしい。それなのにあれだけの近距離で投げられている熱い視線には気づかないという鈍感さも好きです。

ちょっと意固地になっちゃうようなところも石子ってあだ名にはぴったりで良かった。きちんと自分の仕事としてフォローするところはして出過ぎてしまわないように自制している姿がとても清々しい。石子の頭の良さと気持ちの良さがよく出ていました。

羽男が皆の前でフリーズするとパラリーガルの領域を超えない範疇でしっかりフォローする柔軟性もあるし、喫茶店の経営状況を調べて代替案を考えるなど色んな方向から物事を捉えてアプローチ出来るし、試験には合格できないけど十分に弁護士としての素質があるのが伺えるところが良かった。思ったより頭は堅くないけど、早口で無駄のない話し方や真面目な態度、お堅い雰囲気が「石子」というあだ名にぴったりで、でも決して面白みがないわけではなく、時折見せる可愛い笑顔やイラっとすると舌打ちする姿など、キュートで人間味もあってとても魅力的に演じていたと思います。羽男との早口＆長台詞のやりとりも見ごたえありました。