越路吹雪物語

しっかりしていて母性のような温かさがあり、時々おっちょこちょいなところもある、チャーミングで人間味のある演技がとても素敵でした。ドラマを観る前は、才能ある岩谷さんがどうしてそこまで越路さん優先で仕事していたのかなと不思議に思っていましたが、市毛さんのコーちゃんとのテンポの良いやりとりや芝居から2人の深い絆と信頼関係が伝わってきて疑問が解消された気がします。岩谷さんご本人もこんな方だったのかなと思える、リアリティのある息づいた演技をしていたと思います。

コーちゃんの手術を待っている時の祈るような表情、余命3か月と聞いたときの涙、「病気のことで嘘をつかない」というコーちゃんとの約束を破ることにした時の覚悟を決めたような強い眼差し…時子の仕草、表情すべてからコーちゃんへの深い愛情が伝わってきて、観ていて胸が痛く切ない気持ちになりました。コーちゃんの前で明るく振舞う姿も痛々しく、コーちゃんを失う悲しみや無念さが伝わってきました。

57話で「ストレートプレイがやりたい、演技を勉強したい」と言うコーちゃんを見つめる表情が印象的でした。コーちゃんを眩しそうに見つめる笑顔から、スターになってもチャレンジ精神旺盛なコーちゃんを尊敬し、誇らしく思う気持ちが伝わってきましたし、どんなに忙しくても時子がマネージャー業を最優先する説得力も感じられました。

56話でコーちゃんに「恋をしていなくても私の人生は豊かよ」と話すシーンが良かったです。充実した晴れやかな笑顔が素敵で、強がりではなく本心からそう思っていることが伝わってきました。改めて恋人を作らなくても、日常生活の中で出会う人や物、すべてが時子にとって特別で刺激的で、そういう豊かな感性が素晴らしい作詞につながっているんだろうなと思いました。

55話で遺影の秋子に「ちょっとホッとしちゃってごめんね」と話しかけるシーンが印象的でした。目に涙を浮かべて申し訳なさそうに遺影に微笑む姿が切なくて、これまで看病シーンは一切出てこなかったですが想像を絶する大変さと辛さがあったんだろうなと見ていて胸が痛くなりました。

54話で法美の曲がヒットしたと大喜びするコーちゃんを見つめる表情が良かったです。コーちゃん同様、とても嬉しそうな笑顔なんですが、コーちゃんを微笑ましそうに見つめる眼差しが我が子を見るように温かくて、ヒットを喜ぶというよりコーちゃんの願いが叶ったことの方が嬉しそうに感じられ、全てコーちゃんのため、コーちゃん最優先という時子の信念が伝わってきたのが良かったです。

53話でコーちゃんのコンサートが無事に終わった時の表情が印象的でした。それまでの張りつめたような緊張感いっぱいの表情から一転、心底ホッとしたような嬉しそうな笑顔をしていて、時子もコーちゃんと同じように初コンサートがどうなるか不安で心配で仕方なかったんだろうなと伝わってきました。またコーちゃんの前ではそんな不安そうな表情は一切見せない時子に、マネージャーとしてのプライドも感じられました。

52話で本番前にナーバスになるコーちゃんを宥めるシーンが良かったです。震えるコーちゃんをしっかり抱きかかえて「大丈夫だから、しっかりしなさい」と力強く励ます姿が温かく頼もしくて、小さな市毛さんがとても大きく見え、母親のような包容力が感じられたのが良かったです。

51話で前田部長に「越路を今飛び立たせてやりたい」と訴えるシーンが印象的でした。コーちゃんの意志を顧みない会社への憤りやコーちゃんの才能をもっと広げたいというマネージャーとしての願い、コーちゃんの望みを叶えてあげたいという親心のようなものも感じられ、普段はあまり感情的にならない時子の必死な気持ちが伝わってきたのが良かったです。

50話で仲間の前で明るく振舞うコーちゃんを見つめるシーンが良かったです。時子自身の心が痛んでいるような辛そうな表情の中に、一生懸命明るく努めるコーちゃんの健気さを愛おしく思っているような愛情も感じられたのが印象的でした。

49話で「枯葉」を歌うコーちゃんを見つめるシーンが印象的でした。自分のことのように辛そうな表情からコーちゃんが立ち直れるか心配する気持ちが伝わってきましたし、辛そうな表情ながらも絶対にこの姿を見逃すまいと真っ直ぐコーちゃんを見つめる姿から、歌手・越路吹雪への敬意が感じられたのが良かったです。

48話でコーちゃんと点滴を受けるシーンが良かったです。最初は申し訳なさそうで遠慮がちな表情をしていましたが、コーちゃんと語り合ううちに徐々に口元が緩んで穏やかな笑顔に変わっていき、コーちゃんの優しい言葉がじんわり時子の心に沁みわたっていくのが感じ取れました。その後のレストランでのコーちゃんとのテンポの良い掛け合いも姉妹のようで微笑ましかったです。

47話でコーちゃんと語り合うシーンが印象的でした。コーちゃんに「本当の家族とは違う」と穏やかに、でもはっきりと伝える姿は、コーちゃんにはコーちゃんの、自分には自分の人生があるという線引きというか壁のようなものが感じられ、コーちゃんに頼らず自分の力だけで秋子を支えていくという時子の強い覚悟が感じられました。

穏やかな表情と落ち着きのある台詞まわしが知性を感じさせ、作詞家として才能溢れる姿に説得力があります。話す相手を真っ直ぐ見据えたり、自分の考えと違うことを言われるとキュッと口元が締まったり、時子の意志の強さと頑固さを感じさせる表現力もさすがだと思います。

市毛さん、演技上手ですね。大地さんは、ちょっとびっくりするくらいあんまりですね。お嬢様女優さんだと思っていましたが、本物の俳優さんでした。

45話のコーちゃんとの喧嘩シーンが印象的でした。感情むきだしで怒るコーちゃんに対して時子は少し悲しそうな表情をしていて、勝手なことをされたという怒りよりも自分の真意が伝わっていなかったもどかしさやコーちゃんの未来に自分はいないんじゃないかという不安、たびたび出てくる「私と法美さん」という言葉に寂しさも感じているように見え、時子にとってコーちゃんが人生の全てなんだということを改めて感じられたのが良かったです。

４４話でコーちゃんに「付き人をつけようと思う」と告げられた時の表情が印象的でした。驚きはもちろん、コーちゃんが自分から離れていく寂しさや、マネージャーとして全てを捧げて越路吹雪を支えているというプライドを傷つけられたような、憤慨しているというような表情がとても良かったです。言葉にしなくても表情だけで、無理をしているのではなく心からコーちゃんのことを最優先にしたいと考えていることが伝わってきました。

43話の花嫁控え室でのコーちゃんとのシーンがとても良かったです。幸せそうなコーちゃんを嬉しそうに見つめていましたが、どこか寂しげで感慨深げな表情をしていて、娘を送り出す母親のような温かさと切なさが伝わってきました。市毛さんのこの表情だけで、２０年を共に歩んだ二人の強くて深い家族以上の絆が感じられたのが良かったです。

42話でコーちゃんに帰るのを引き止められるシーンが印象的でした。強がるコーちゃんの本心をしっかり見抜いて「やれやれ」という表情で帰るのを止める姿はお母さんのような温かさがあり、ちょっと笑みを浮かべていて「甘えられて嬉しそう」という印象も受けました。柔らかい雰囲気ながらいつもシャンとしていて頼もしく、時子自身がしっかり自立した大人の女性に見えるので、コーちゃんのわがままに振り回されていても「顎で使われてる」とかパシリっぽく見えないところも良いと思います。

40話で踊りながらコーちゃんを励ますシーンが印象的でした。「辛かったね」とコーちゃんにかける言葉一つ一つに母親のような温かさが感じられ、ギクシャクとした不慣れな動きもチャーミングで、何とかコーちゃんを元気づけたいという時子の思いやりと深い愛情が伝わってきたのが良かったです。大地さんとの身長差も可愛かったです。

包容力と温かさがあり、コーちゃんをほんわかと包み込む母性が感じられる雰囲気がとても良かったです。ステージに立つコーちゃんを優しく見守る姿が控え目なのに頼もしさがあり、緊張魔のコーちゃんにとって時子は心強い存在だっただろうなという説得力が感じられたのも良かったです。