鎌倉殿の13人

優しく包み込むようなあたたかさを持った役どころというのは、他のドラマなどでもあって、そういう部分は泰時向きなのかなとは思ったけれど、意外と最後のあたり芯を持って力強くという部分や頼りがいというところも見えて、この二つは相反すると思っていたのだけれど同居できるのだと感心しました。最初の頃は肉体的に成長著しい金剛でしたが、最後は精神的に成長著しく感じました。こういう人が新しい世を切り開くんですね。

京に攻め入るとか結構体も張って危ない目もすり抜けてきたはずなんだけど、そういう勇ましいところが見えないんだよなー。義時の希望で良心の塊だからそれで良かったのかもしれないけれど、やる時はやる男って感じが欲しかったかな。

泰時の作った御成敗式目によって、律が生まれ、はじめて鎌倉が幕府組織として成立したと言えます。義時に反発しながらも、最後には貴族の世から武士の世へ向う過渡期として、父のやり方を良しとはしないまでも、その功績の重さを感じとり、次期執権へと成長していくわけですが、ちょっとその成長速度が遅いかなと感じました。それはちょっと坂口さんの芝居がナイーブすぎる印象だったせいかもしれません。まあ脚本上、義時が失った素朴で真面目なところが受け継がれないとダメなわけで、そのため仕方なかった部分はあるのでしょう。また現代劇ではないので、もう少し動きが大きくてもよかったかな。でも全体的には良かったかなと思います。

ほんとは息子として父のことが心配でたまらないけれどみんなの手前父親のことを助けてほしいとは言えずにいた太郎。だけど政子の演説を聞いて嬉しかったのだろう。みんなの呼応も嬉しくて興奮気味に立ち上がったのがとても自然で微笑ましかった。言わないけれど父親のことを尊敬し大好きなんだなと思った。

行きたくないと駄々をこねてみたり、今となっては唯一のオアシス要員だと思うのに、和田合戦の後の父とのやり取りには少し違和感が。泰時なりに何か覚悟を持ったということなのだろう。でも初の尻にひかれている感は残して欲しいな。

実朝から返歌が欲しいと言われてもらった詩が恋の詩だと分かったのは他の人にそう言われたから？そして返しに行った時はどんな気持ちだった？そしてまたもらった詩が失恋の詩だって気づいた？肝心な泰時の気持ちがどの場面でも感じられず、返歌が難しくて書けないのか、実朝の気持ちに気づいて悩んだのか、一切読むことができなかった。

彼の存在はドロドロした鎌倉殿の中で唯一残された良心なのかもしれません。鎌倉殿から渡された和歌を前に悩んでいる姿などオアシスのよう。あのダークになった義時でさえ泰時の傍らで寝転んでしまう。それが唐突でもなく自然に見えるのがすごいと思う。

力強く父に進言している姿は義時の若い頃そのままで、ずっと見てきた視聴者には義時同様大きくなったことを喜ばずにはいられない存在となりました。殺伐とした鎌倉で唯一育った純粋な心を持つ青年。どうかそのままでと願わずにはいられない。

少年と思われる年の金剛を演じた坂口健太郎さん。普通に立って並べば友人と思われる小栗さんと親子とはびっくり。だけど2人が並んでお芝居していると初めての狩でキョロキョロしたりお父さんに嬉しそうに獲物を見せたりしている姿がほんとに少年のようですごいなと思いました。