宮沢賢治の食卓

演技力だけをいうのであれば、かなり高いと思います。美女と野獣で日本語吹き替え版の声優をやってたように、俳優としての演技力はすごいです。しかし、表情がいつも今にも泣きそうな顔にしか見えないので、なんだかそこが勿体無いと思います。

山崎さんの品が良くてノーブルな雰囲気が音楽を愛する教師という役に似合っています。ピアノを弾く姿もさすがに様になっていて、女生徒の憧れという設定も納得出来ます。トシへの切ない気持ちもトシを見つめる眼差しからしっかりと伝わってきます。歌が上手い人は耳が良いから、東北弁も違和感なく自分のものに出来てしまうのですね。

とにかく歌が上手い。ミュージカル俳優ということもあり、発声がしっかりしている。また顔で表現することもうまく、感情の分かりやすい人物を演じるには彼が一番向いていると思う。しかし、それが逆に耳につくと感じる視聴者もいるだろう。

ミュージカルのイメージが強いですが、舞台の数に比例して、本当に実力ある演技は素晴らしいです。滑舌が良いのでセリフも聞きやすいですし、立ち回り方も綺麗です。ひとつひとつ丁寧にお芝居されているのがよく分かります。

物語が進むごとに賢治の人間性に惹かれて理解者になっていく演技がとても自然で良かったです。観ていて「え？いつの間に仲良くなってるの？」という違和感がなく、会話のテンポや仕草、お互いを見る目線などから本当に理解し合っている親友に見えました。見た目もスタイリッシュで格好が良く、朴訥とした賢治との対比になっていて、それが賢治の素朴な魅力を引き立たせていたと思います。最終回で、賢治が川に入っていくのを「馬鹿か、君は」と目に涙を溜めて殴って止める場面は、藤原先生の賢治とトシを思う気持ちが痛いほど伝わってきて、胸が締め付けられました。素晴らしい演技だったと思います。

ミュージカル俳優にしかない雰囲気が、このドラマの雰囲気には逆にぴったりと合っているなあと思いながら見ています。音楽教師という役どころにも合っていますし、なぜか独特の「昔っぽさ」がある顔立ちや演技がとてもいいです。