危険なビーナス

最初から最後まで色気たっぷりでなにかを抱えている感が満載でした。息子に対してベタベタしすぎているのがとても気になりました。愛人の家に養子として入り込むなんて相当神経図太いと思います。伯朗さんには結構いろいろはなしていたのが意外でした。

「愚かな人ね」や「いいえ」など一言の短い台詞にも、相手を小馬鹿にしてたり「そんなこと言われるのは心外だ」というような抗議の感情が込められていたり、一応大人の女性として取り繕ってはいるけど、たまに負の感情を露骨に示すところが上手いです。和服も洋服も上品に艶やかに着こなしていつでも美しかったし、手の添え方や座る時の足の流し方もしなやかで色っぽくて、「富豪の愛人で銀座のクラブの経営者」という役柄のイメージをそのままビジュアル化したような見た目の作り込みも素晴らしかったです。

こういう役が本当にうまい。どんなドラマに出ていても存在感があるので引きつけられて見てしまう魅力的な女優だと思います。

祥子との対決、迫力があって見ごたえがありました。感情的な祥子と違って余裕があって冷静なところが逆に怖くて、「こっそり殺して全て奪いとります」って台詞も笑顔で穏やかな口調だけどネチネチした陰湿さと凄みがあってゾクッとしました。君津の父親のことを気にしている時の意味ありげな表情もすごく気になる～！少ない出番でも毎回存在感抜群の演技で素晴らしいです。

親族会で楓の味方をする勇磨を横目で睨んだり、楓に刺すような視線を向けたり、目の表現がすごくていつも印象に残ります。嫉妬や情念がたっぷり込められてそうな湿度のある眼差しがめちゃくちゃ怖いです。勇磨の胸ぐらを掴むシーンも迫力ありました。伯朗に交換条件を持ちかける時の甘ったるい声と淡々とした鋭い口調の使い分けもさすがで、佐代の駆け引きの上手さを感じさせました。

顔つき、服装、セリフ、どれをとっても設定に見事ハマっている。全く昔から変わらず、少し悪魔的な魅力をいつまでも醸し出していて、このような女性をやらせたら右に出る者はいないと思う。特に紫色のドレスが凄い似合っていた。

高価な着物を着こなす銀座のクラブのママの風格があった。矢神家では息子にベタベタしている溺愛ママだが、店では接待のプロの顔。伯朗の前では母・禎子と学生時代から親友だったと『素』の顔を見せた。矢神家で敵に囲まれて生きる母の『職人技』をみたと思った。

有名な俳優陣が揃っているものの、なぜか思ったよりもパッとしない印象のドラマの中で、この人はさすがに役柄に合った良い演技をしていると思います。悪くて怖い親戚一同の中でも、控えめながら悪～い女の何とも言えない不気味な感じを出して、キラッとしている印象です。

一見何を考えているのか分からず、穏やかに不気味さを醸し出していて、追い込まれても全く動じない。しかし昔の写真を見せられた時に少し動揺したところが凄かった。銀座のクラブのママという設定もまた良い。着物も凄くハマっていた。

伯朗や楓の質問をのらりくらりと巧みにかわす姿は、さすが銀座に店を構えるママという貫録がありました。楓にズバっと嫌味を言うシーンも営業スマイル浮かべてる分、より怖さが際立っていて良かったです。いつも余裕で何を考えてるか分からないところがありますが、伯朗に禎子との過去を話す時の懐かしむような口調や「楓さんには気を付けた方が良い」と忠告する時の真剣な表情には重みがあって真実味が感じられ、初めて「本当の佐代」を見られた気がしました。

妖艶で美しく、したたかさもあって愛人だったという設定にも説得力があります。勇磨と親子だったのはびっくりだし母と息子の距離感には見えないけど、「どういう関係なの？！」と視聴者の好奇心を掻き立てる思わせぶりな演技が良かったと思います。盗聴器をしかけたことがバレても平然としてるし、思ったように事が進まなくても苛立ったりせず妙に余裕なところも、憎悪メラメラの祥子と対照的で面白いです。

佐代さんが康之助の愛人だったというのは、まあ納得できるし想像の範囲だけど、勇麿との関係が親子だったとは少々驚き。見た目的にも、歳の離れた姉弟にしか見えないし。まあ、実の姉弟にしてはベタベタとまとわりつきすぎだとは思ってたけど。
いつも感情をおもてに出さず、何を考えてるか分からないミステリアスな人という雰囲気満点で、登場人物の中では一番魅力的で興味をそそられる。

とびきり妖艶で魅力的な人だから、登場人物の女性の中では一番気になる存在。勇麿にベタベタしてることが多いけど、姉弟という関係だけじゃなさそうで、とても気になる。
他人のどんな言葉にも煽られることなく、常に自分のペースは崩さないといった感じのマッタリした喋り方も、頭の良い紗代さんの「計算」を感じる。

その前の『テセウスの船』といい今作といい、登場人物全部怪しいって感じのドラマには欠かせない存在になりましたね。人懐っこいような笑顔と紙一重の狂気とを持ち合わせているからこの人が善人なのか悪人なのか瞬時には判断つかない。そこが最大の魅力だろうね。

勇磨への執着が怖いけど、夢中になってると見せかけて遺産のために利用してるだけにも見えるし、本心がよく分からないミステリアスさがあって良いと思います。妻夫木さんも吉高さんも実年齢より若く見えるので、この二人のシーンのあとに麻生さんとディーンさんが出てくると一気にアダルトで妖しい雰囲気になって、ガラっと空気が変わってドラマ全体にメリハリがついていると思います。

着物姿が艶やかで美しかったです。祥子に嫌味を言われても「これが私の正装なので」と涼しい顔で返したり、勇磨に騙された伯朗を小馬鹿にしたように笑ったり、しっとりしとやかな見た目とは違う気の強さと図太さが感じられる演技もとても良かったです。絶対何かやらかしそうだなという妖しい空気をプンプン匂わせていて、ドラマの良いスパイスになっていると思います。

一癖も二癖もあって意地も悪い感じだけど、弟の勇麿とも人に言えない関係を持ってるんじゃないかと疑いたくなるくらい、ツヤっぽくて女性としては魅力的。彼女にじっと見つめられると何もかも見透かされそうで、たぶん矢神家では一番、人を見る目がありそうな感じ。言動やファッションも含めて、ヒロイン以上に興味をそそられる存在。